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PPWRの8月12日に始まった義務

【PPWRの8月12日に始まった義務】

2025年2月11日に発効した包装・包装廃棄物規則(PPWR、規則(EU)2025/40)(*1)
は、第71条で2026年8月12日から原則適用されました。
PPWRは、前文 188文節、条項13章71条 、附属書 13で構成されています。
旧包装指令94/62/ECは廃止され(第70条)、EU域内に拠点を持たない日本企業で
あっても、EU市場に包装または包装された製品を上市する限り、新たな義務が直接適
用されます。
2026年8月12日以降は、包装中の懸念物質の最小化(第5条)、重金属4種(鉛・カド
ミウム・水銀・六価クロム)の合計濃度100mg/kg以下、食品接触包装を対象とした
PFASの濃度制限(個別25ppb・総和250ppb・総フッ素50ppm)が求められます。
さらに、拡大生産者責任(EPR)に基づく加盟国ごとの生産者登録(第44条)が必要
となり、EU域内に拠点のない場合には書面委任による授権代理人の選任(第45条第
3項)が求められます。
なお、本規則のすべての義務が同日に始まるわけではなく、再生プラスチック含有率
や包装最小化など一部の要件は2030年1月1日以降に適用が開始されます。本資料で
は、2026年8月12日を起点として日本企業に発生する義務と対応スケジュールを解説
します。

1.義務の日程
PPWRの義務は、2026年8月12日から始まっていますが、多くの義務は段階的に施行さ
れ、具体的な内容は実施規則の公布待ちになっています。
(1)2025年2月11日 : 発効日
規則は官報掲載の20日後に発効し、この時点で法的拘束力を生じますが、義務の大半
はまだ発生しません(第71条第1項)。唯一、再使用可能包装の定義要件(第11条第
1項)は発効日から適用され、最少回転数だけは後述の委任法(2027年2月12日採択予
定)の定める日から要求されます。
(2)2026年8月12日 : 原則適用開始
第71条第2項により本規則はこの日から適用され、同日、旧包装指令94/62/ECが廃止
されます(第70条第1項)。この日から企業に発生する主な義務は以下のとおりで
す。
(a)包装中の懸念物質(SoC:Substances of Concern)の最少化および重金属4種(鉛
・カドミウム・水銀・六価クロム)の合計濃度100mg/kg以下(第5条第1項・第4項
)。
(b)適用対象は上市される全包装です。
(c)食品接触包装について、PFAS濃度制限(個別25ppb/総和250ppb/総フッ素
50mg/kg超で成分証明)の適用開始。
(d)製造者・輸入者の義務(第15条・第18条)が適用され、適合性評価(第38条)・
EU適合宣言(第39条)・技術文書(附属書VII)の整備が原則この日から必要になり
ます。
(e)EPR(拡大生産者責任、第45条)と生産者登録(第44条)の枠組みが適用されま
す。EU域外(日本)の生産者には、オンラインプラットフォーム経由でEU消費者向け
に提供する場合、第44条の登録情報と自己認証の提供が義務づけられ、不備があると
フルフィルメントサービスが停止されます(第45条第4項?第8項)。
日本企業の実務対応としては、この日までに①成分・物質データの収集、②重金属・
PFASの分析対応、③技術文書(TD)・EU適合宣言(DoC)の準備が求められます。
(3)2026年2月12日 : 登録簿の実施法採択期限
EU委員会は生産者登録簿の登録・報告形式、データ粒度、包装類型・材料区分を定め
る実施法をこの日までに採択します(第44条第14項)。
各国の登録簿自体は、この実施法の発効から18か月以内に加盟国が設置するため(第
44条第1項)、順調にいけば2027年8月頃が目安です(条文上の確定日ではなく見込み
です)。登録簿が稼働して初めて登録義務が実効化し、登録番号は申請から12週以内
に付与されます(第44条第11項(b))。登録後の年次情報提出は毎年6月1日まで(第
44条第7項・第8項)です。
実施規則案(*2)の「生産者登録簿への登録及び同登録簿への報告の様式、並びにそ
の際提供すべき情報」が提案されています。

(4)日本企業(EU域外事業者)の授権代理人:加盟国ごとの国内法化次第
第45条第3項は、第三国に設立された生産者について、加盟国が書面委任による
EPR専用の授権代理人(authorised representative)の選任を義務づけることを認め
ています(「Member States may provide」)。したがって義務化の時期・要件は加
盟国ごとの国内法に委ねられており、現時点では国別の導入時期を本文から確定でき
ません(未確認)。ただし、EU域内に拠点がなくても登録・EPR義務を履行するため
の実務上の要となる点は変わりません(前文(123))。
(5)2027年 ? 委任法・実施法の採択(間接的に義務内容を確定)
(a)2027年2月12日までに、再使用可能包装の最少回転数に関する委任法を採択(第
11条第2項)。
(b)2027年6月30日までに、再使用目標の算定方法を定める実施法を採択(第30条第
3項)。
(6)2028年 : 堆肥化・表示・空隙率方法論
(a)2028年2月12日から、茶・コーヒーバッグ等(第3条第1項第1号(f))と果物・野菜
の粘着ラベルは産業用堆肥化適合が義務化(第9条第1項)。
(b)2028年2月12日までに、空隙率50%上限の算定方法論の実施法を採択(第24条第2項
)。
(c)2028年8月12日(または実施法採択後24か月/30か月の遅い方)から、材料組成の
調和ラベル表示(第12条第1項、廃棄物収集容器のラベルは第13条第1項)が段階的に
義務化。同日、材料識別コード決定97/129/ECが廃止(第70条第2項)。
(7)2029年1月1日:デポジット・リターン制度(DRS)
加盟国は単回使用プラスチック飲料ボトル(3リットル以下)と金属飲料容器につい
て、年間90%以上の分別収集を確保する措置をこの日までに講じます(第50条第1項・第
2項)。これは主に加盟国・飲料事業者への義務ですが、対象包装を上市する企業は
実務上、制度への参加・デポジット対応が必要になります。
(8) 2030年1月1日(または実施法発効後3年の遅い方)? 持続可能性要件の全面適用
(a)再生プラスチック含有率(第7条第1項):接触感受性包装ではPET主体が30%、そ
の他のプラスチックが10%の最低含有率が課されます(附属書II表1で包装類型別に規
定。飲料ボトル等の個別比率は実施法・附属書の確定内容に依存します。2040年に向
けた段階的引上げは、現時点では未確認と明記します)。
(b)包装最小化(第10条第1項・第2項)。
(c)グループ・輸送・eコマース包装の空隙率上限50%(第24条第1項)。
(d)特定の単回使用包装形式(附属書V)の使用制限・禁止(第25条)。
(e)輸送・eコマース・飲料包装の再使用目標(第29条)。
(f)リサイクル可能性の性能等級(DfR)の拘束的基準も、委任法が2028年1月頃に採
択されるとの前提で、2028年1月に採択されるとの前提の下、その発効後2年=2030年
1月1日頃から適用される見込みです(採択時期は委員会の想定であり確定ではありま
せん)。
(9) 2028年12月31日/2029年12月31日:旧指令の経過条項
 旧94/62/ECの一部条項(重金属の再溶融・リサイクル例外、本質要件など)は
2028年12月31日まで、データ伝達等は2029年12月31日まで継続適用されます(第70条第
1項(b)?(d))。2026年8月12日以前に上市された包装は、PPWRに不適合でも市場に残
せますが、同日以降の上市からは新規則が適用されます。
以上が主要なマイルストーンです。対応計画の骨子としては、①2026年8月12日まで
に第5条(物質)・技術文書・EU適合宣言の整備、②加盟国登録簿の稼働(2027年8月
頃目安)を見据えた登録体制と授権代理人の準備、③2030年1月1日を見据えた再生材
・最小化・再使用設計への設計変更、という3段構えが実務上の目安になります。

2.8月12日に始まった義務
2026年8月12日から第5条が発効しました。
2.1第5条 包装に含まれる物質に関する要件(要旨)
(a)懸念物質の低減: 欧州市場に投入する包装について、懸念物質の存在および濃
度を最小限(環境悪影響やマイクロプラスチック、リサイクル阻害を防ぐ水準)に抑
えて製造する。
(b)重金属濃度の遵守: 包装またはその構成部品に含まれる鉛、カドミウム、水
銀、六価クロムの濃度合計を100 mg/kg以下に抑える。
(c)PFAS規制の遵守(2026年8月12日以降): 食品接触用包装材について、設定され
た制限値(個別PFAS:25 ppb、合計:250 ppb、PFAS全体:50 ppm等)を超える
PFASを含有する製品を市場に投入しない。また、総フッ素量が50 mg/kgを超える場合
は、下流ユーザーとして製造・輸入業者へフッ素含有量の証明を提供する。
PFASの定義は、REACH規則のユニバーサルPFAS制限案と同じです。
(d)技術文書による適合証明: 重金属(第4項)やPFAS(第5項)に関する要件の適
合性を、附属書VIIに従って作成する技術文書において証明する。

なお、「食品と接触することを意図したプラスチック材料および成形品規則EU)
10/2011」(PIM)の改正規則品に関する規則(EU) 2024/3190(ビスフェノールA(
BPA)およびその他のビスフェノール類、ならびに特定の有害特性について調和分類
されたビスフェノール誘導体の使用に関する規則)(*3)により、BPAは2026年7月
20日から制限されています。

2.2 前文に見る第5条の意図や目的など
 EU法規制は、前文に検討段階での背景、意図や目的などが記載されています。前文
は長文ですので、第5条の関連する前文の文節番号とその要旨を整理します。
(a)第18文節:包装の全ライフサイクル(製造?使用?廃棄・廃棄物管理)を通じた認
識物質に影響する人の健康・環境・循環性への影響に本規則が対処する必要性を理解
(b)第19文節:化学物質戦略に基づいて、特定重金属その他の恐怖物質の含有量を制
限する設計・製造を求める。
(c)第20文節:PFASは数千種から成る合成化学物質群で、食品接触材料・包装は使用
量の最も多い分野の一つ。難分解性や発がん性等の有害性エンドポイントを説明
(d)第21文節:食品接触材料経由のPFASばく露は人の健康のために許容されるリスク
であり、食品接触包装でのPFASを制限する。他のEU法との重複回避のための評価実施
を規定
(e)第22文節:ビスフェノールA(BPA)について、EFSAの2023年評価に例外し、規則
(EC)1935/2004に基づく制限が2024年末までに注目である旨を説明
(f)第23文節:BPA制限の食品包装等への適用と18か月の移行期間、ゼロ汚染行動計画
には基づく発生源での予防原則を確認
(g)第24文節:包装・包装構成要素中の物質はREACH規則(EC)1907/2006のVIII章(制
限)に沿って発生源で規制されることを確認
(h)第25文節:REACH規則の附属書XVII(制限)および規則(EC)1935/2004(FCM)に
規定される食品接触材料および製品に適用される制限に加え、一貫性を保つため、包
装または包装構成部品に含まれる鉛、カドミウム、水銀、および六価クロムに関する
既存の制限を維持することが適切である。
(i)第26文節:重金属濃度の引下げ、リサイクル材料又は閉鎖的・管理された連鎖の
製品ループへの濃度合計不適用条件、特定包装形態の中止を決定委任法令の範囲を規
定
(j)第27文節:PFAS制限を無視することなく、化学的安全性・食品安全性を理由とす
る制限は他のEU法で対応

2.3FAQによる解釈
PPWRに関するFAQ(*4)も解釈や企業対応に参考になります。第5条に関連するQ番号
をお示しします。
(a)第5条(5)のPFASに関する規制は、意図的に添加されたPFASと意図せずに含有される
PFASの両方に適用されるのか?

PPWRで採択されたPFAS規制は、意図的に添加されたPFASと意図せず含まれるPFASを区
別していない。したがって、第5条(5)の規定は両方に適用される。なお、選定された
いくつかの包装材13について実施されたPFASの予備的な実験室分析結果によると、実
際にはPFASが意図的に添加された包装材のみが、PFASの限度値を超える結果を示すこ
とが判明した。

(b)これらの制限は、包装製造に使用される材料のみに適用されるのでしょうか、そ
れとも、材料およびそれに関連するインク、ワニス、糊、接着剤にも適用されるので
しょうか?

これらの制限は、製造業者によって市場に流通される包装単位全体(それに関連する
インク、ワニス、糊、接着剤を含む)に適用されます。製造業者は、適合性を証明す
るために必要な技術文書を作成する責任を負います(詳細については、欧州委員会の
ガイダンス文書を参照してください)。

(c)例えば食品関連法規の下ですでに要求されている情報は、PPWR第15条(5)および
(6)に定められた要件を満たすのに十分であるとみなすことができるか?

食品関連法規とPPWRは異なる法的枠組みであり、それぞれ異なる目的を追求している
ため、相互に補完的なものと捉えるべきである。食品関連法規に基づき提供される情
報が、PPWR第15条(5)および(6)に定められた要件を満たすのに十分であるかどうか
は、当該食品関連法規の具体的な規定、およびそれに基づいて提供される情報の種類
や記載位置によって異なる。
PPWR第15条(5):PPWR第15条(5)は、包装に、その識別を可能にする型番、ロット番
号、シリアル番号、またはその他の要素を表示することを義務付けている。ただ
し、包装の大きさや性質上それが不可能な場合は、必要な情報を包装製品に添付する
文書に記載してもよい。包装の識別は、所管当局(食品の所管当局とは限らない)
が、PPWR の目的のために包装の製造業者が作成した適合宣言(DoC)と包装を関連付
けることができるようにするために必要とされる。食品関連法規の目的で提供される
トレーサビリティ情報は、当該情報が、所管当局による包装の識別を可能にし、
DoCと関連付けられ、さらに包装自体または添付文書に記載されている場合を除
き、PPWR第15条(5)の要件を満たさない。
PPWR第15条(6):包装の製造業者は、PPWRにおける「製造業者」の定義に基づいて決
定されなければならないが、消費者への食品情報の提供に関する規則(EU)No
1169/201124(FIC規則)第8条は、責任ある食品事業者を決定する際に柔軟性を認め
ている。したがって、責任ある食品事業者と包装の製造業者が、必ずしも同一の自然
人または法人であるとは限らない。
食品法上の目的で特定の事業者が特定されているという事実が、PPWR上の目的におけ
る製造業者の身元を決定づけるものではない。
食品事業者と包装の製造者が同一の自然人または法人である場合、提供される情報が
両方のEU法の要件を満たしていることを確保することが重要である。
例えば、FIC規則第9条(1)(h)は、食品事業者の氏名または商号および住所の記載を義
務付けており、FIC規則第12条は、当該情報の表示位置に関する要件を定めてい
る。
PPWR第15条(6)は、包装の製造業者の氏名、登録商号または登録商標に加え、連絡可
能な郵便住所、および利用可能な場合は電子的な連絡手段の提供を義務付けてい
る。

第12条(2)および第12条(4))に関する情報を提供するデータキャリアが備わっている
場合)、または添付文書によるものとする。
したがって、FIC規則に従って食品事業者の情報を提供したとしても、必ずしも
PPWR第15条(6)に定める包装の製造業者に関する情報の提供要件を満たすとは限らな
い。経済事業者が、食品事業者と包装の製造業者の両方について一連の情報を提供し
たい場合、両方のEU法の要件を満たす形式で提供しなければならない。すなわち、
FIC規則のみに準拠しているだけでは不十分である。

2.4 要点
食品関連法規(FIC規則など)とPPWR(包装・包装廃棄物規則)は異なる法的枠組み
であり、食品法上の要件を満たしているだけではPPWRの要件を満たしたことにならな
いため、両方のEU法要件を同時に満たす形式で情報を提供しなければならない。
(a)トレーサビリティ情報の表示義務(PPWR第15条5関連) 包装の識別を可能にする
型番・ロット番号・シリアル番号等を、包装自体または添付文書に記載することが義
務付けられる。これは所管当局が適合宣言(DoC)と包装を関連付けるためのもので
あり、食品法上のトレーサビリティ情報がこの要件を自動的に満たすわけではな
い。
(b)製造業者等の情報記載義務(PPWR第15条6関連) 食品法上で責任ある事業者とし
て特定されていることと、PPWR上の「製造業者」は必ずしも一致しない。PPWR第15条
(6)では、包装の製造業者の名称、連絡可能な郵便住所、電子連絡先等の明記が義務
付けられており、FIC規則に基づく食品事業者名の表示だけでは不十分である。
(c)情報提供の方法・位置に関する要件の遵守 情報の記載位置や提供方法(物理的形
態、包装上や集合包装上のQRコード、または添付文書など)についても、それぞれの
規制(FIC規則の表示位置要件やPPWRの指定方法)に適合させる必要がある。

3その他の義務
3.1 第12条 包装の表示について
(a)材料組成に関する調和化ラベルの貼付
-消費者の分別を容易にするため、材料組成に関する情報を含むピクトグラムベース
の調和化ラベルを包装に付さなければならない。
-第9条の堆肥化可能な包装については、堆肥化可能であること、家庭用堆肥化には不
適であること、自然環境に廃棄してはならない旨を明記する必要がある。
※電子商取引用包装を除き、輸送用包装やデポジット・リターン制度(DRS)対象包
装には原則適用されない。
(b)懸念物質のデジタル表示対応
-懸念物質を含む包装については、標準化されたオープンなデジタル表示技術を用い
て表示しなければならない(2030年1月1日までに委員会が方法論を定める実施法令を
採択予定)。
(c)再利用可能な包装に関する表示およびQRコードの導入
-再利用可能な包装には、利用者にそれが再利用可能であることを知らせる表示を付
さなければならない。
-再利用システムの有無や回収拠点、再利用回数(または平均推定値)などの詳細情
報を、QRコード等の標準化されたデジタルデータ媒体を通じて提供する必要があ
る。また、販売時点での明確な識別・使い捨て包装との区別が求められる。
(d)再生材料・バイオベース含有率に関する表示の遵守
-再生材料含有率やバイオベースプラスチック含有率に関する情報をラベル記載する
場合、関連する実施法令の仕様や確立された方法論に準拠しなければならない。
(e)表示方法・デジタル手段・言語に関する要件
-ラベルやQRコード等は、容易に消去できないよう目立ち、判読可能かつ確実に貼付
・印刷・刻印されなければならない。
-オンライン販売の製品では、購入前にエンドユーザーが利用できるようにする必要
がある。
-表示する情報は、製品が市場提供される加盟国が定める「エンドユーザーが容易に
理解できる言語」で提供しなければならない。
-デジタル手段で収集する個人データは、コンプライアンス情報へのアクセス提供と
いう限定目的のみとし、販売・マーケティング情報の表示と混同してはならない。
(f)消費者等を誤解させる表示の禁止
-消費者や最終利用者を誤解させたり混乱させたりするおそれのあるラベル、マー
ク、記号等の表示を行ってはならない。
(g)拡大生産者責任(EPR)およびDRSに関する識別記号の対応(2027年2月12日までな
ど)
-EPR制度の対象となる包装は、制度適用国全域において識別可能でなければなら
ず、製造者の義務履行を示すQRコード内の対応記号やデジタルマーキング等で明示し
なければならない(リサイクル性等について誤解を与えないものとする)。
(h)医薬品等の例外規定
-一定の医薬品・動物用医薬品などの一次・外装包装については、スペース不足や安
全な使用の妨げとなる場合に本条の適用外となる特例がある。

3.2 第45条 拡大生産者責任
(a)拡大生産者責任(EPR)の負担と対象範囲
加盟国の領域内で初めて市場に供給する包装(包装済み製品の包装含む)、または最
終使用者ではないにもかかわらず開封する包装について、拡大生産者責任を負う。
従来の費用に加え、包装廃棄物収集用容器への表示にかかる費用や、収集された混合
都市廃棄物の組成調査にかかる費用などの財政的拠出金を透明性・比例性・非差別的
な方法で支払う義務を負う。
(b)授権代表者(代理人)の選任義務
第三国(EU域外)に拠点を置く生産者などは、包装を初めて提供する各加盟国におい
て、書面による委任により拡大生産者責任に関する授権代表者(代理人)を指名・任
命する義務を負う場合がある(加盟国が義務付けることができる)。
(c)オンラインプラットフォーム(ECモール)利用時の情報提供・事前確認義務
オンラインプラットフォームを通じてEU域内の消費者に製品等を提供する日本企業等
の生産者は、サービス利用の許可を受ける前に、プラットフォーム提供者に対して以
下を提出・確認させなければならない:
-対象加盟国における登録情報および登録番号
-該当加盟国でのEPR要件を遵守している包装のみを提供していることを確認する自己
証明書
(d)フルフィルメントサービス提供者への情報提供と正確性の責任
-フルフィルメントサービス(発送代行等)を利用する際、契約締結時に上記と同様
の登録情報・自己証明書をサービス提供者に提供しなければならない。
-提供した情報の正確性については、生産者が全責任を負う。
-情報が不正確・不完全等として是正を求められた場合、訂正または補完を行わない
と、サービス提供者によってEU域内消費向けの一連のサービス提供が停止される。

3.3加盟国国内法の状況
包装材のEPR制度は、PPWRの前のPPWD(Directive 94/62/EC)(*5)の第7条で、加盟
国は、2024年12月31日までに、すべての包装について拡大生産者責任制度が確立する
ことが規定されていました。
主要国のEPR制度は以下で確認できます。
(1)フランス
所管は、環境移行・エネルギー省(Ministere de la Transition ecologique et de la Cohesion des territoires)(*6)です。
フランスの環境法典(Code de l'environnement)やAGEC法に基づくEPR制度の全体方
針を管轄しています。
ADEME(環境・エネルギー管理庁) / SYDEREP(EPR登録・ID管理プラットフォーム)
が、製造業者・輸入業者が取得すべき一意の識別番号(IDU)や各業界のEPRデータ管
理を行う公的プラットフォームです。
(2)ドイツ
ZSVR(包装登録中央局:Zentrale Stelle Verpackungsregister)が、所管です。
ドイツにおける包装法(VerpackG / VerpackDG)の厳格な運用および公式データ
ベース「LUCID(ルシッド)」を管理する公的機関です。ドイツ市場向けに包装材を
出すすべての事業者が登録を義務付けられています。
登録システム(Zentrale Stelle Verpackungsregister)(*7)で登録します。な
お、にあります。2026年8月12日に改正(VerpackDG)(*8)されています。
(3)イタリア
MASE(環境・エネルギー安全省:Ministero dell'Ambiente e della Sicurezza
Energetica)(*9)が所管しています。
イタリアの環境統合法典(立法令第152/2006)で管理しています。
CONAI(イタリア国立包装コンソーシアム)(*10)が、イタリア国内における包装材の
EPRおよび環境拠出金(CAC)の管理・回収の実務を担う代表的なナショナル・コン
ソーシアムです。

3.4 国連プラスチック条約によるEPR
(1)これまでの経緯(*11)と現在のフェーズ
-2025年8月のINC-5.2(ジュネーブ)および2026年2月の再開会合(INC-5.3)を経
て、新議長(チリのフリオ・コルダーノ氏)のもとで実質的な作業ロードマップが再
構築されました。
-現在は、単一の合意文書(テキスト)の欠如を補うため、合意点と対立点を明確に
した「交渉支援文書(Reference Document / Aid to Negotiations)」のブラッ
シュアップが進められています。
(2)直近の交渉スケジュール
-2026年に入り、閣僚級(各国の代表団長:HOD)によるオンライン会合が定期的に開
催されているほか、対面での非公式会合も順次行われています(6?7月のナイロビ会
合に続き、2026年9月27日?30日にはタイ・バンコクでのHOD会合が予定されています
)。
-このバンコク会合等での議論を経て新版の草案・支援文書が策定され、次回の正式
な全体会合であるINC-5.4(2027年3月13日?24日に開催予定)に向けた調整が進めら
れています。
(3)交渉経緯
これまでの交渉文書や議論におけるEPR制度の主な概要と方向性は以下の通りです。
(a)制度の目的と基本原則
-プラスチック製品(特に容器包装や使い捨てプラスチックなど)を市場に投入する
生産者に対し、製品の設計・製造段階だけでなく、使用後に発生する回収・選別・リ
サイクルなどの廃棄物管理費用に対する責任(金銭的・物理的責任)を義務付けるも
のです。
-汚染者負担の原則(PPP)に基づき、従来の自治体や住民に偏っていた廃棄物処理の
経済的負担を移行させます。
(b)主要な義務・要素
-国の法制化義務: 各加盟国に対し、自国国内でプラスチック製品に関するEPR制度
を導入・確立することを義務付ける枠組みが検討されています。
-生産者責任組織(PRO)の活用: 個々の企業が単独で回収を行うのではなく、生産
者責任組織(PRO)などを通じて集団的に義務を履行する仕組みや、その認可・透明
性の確保が想定されています。
-エコ・モジュレーション(料金の環境配慮型調整): 単に一律の費用を拠出するだ
けでなく、リサイクルしやすい設計、再生プラスチックの含有率、有害化学物質の不
使用などに応じて、事業者が支払うEPR拠出金(手数料)を増減(インセンティブ化
)させる仕組みが重視されています。
(c)交渉における主な論点
世界共通ルールか、各国の自主裁量か: 欧州などの環境先進国が「世界共通の厳格な
EPR基準や数値目標」を法制化したいと主張する一方、発展途上国や一部の資源国・
産業界からは、各国のインフラ状況や経済事情に応じた柔軟な制度設計(ボトム
アップ型)を求める声根強く、条約文書への詳細な義務付けの度合いについて調整が
続いています。

4.TD(Technical Documentation)とDoC(Declaration of Conformity)
4.1 TD
技術文書は、附属書VIIで項目が規定されています。
小型の電気電子機器を包装して輸出するケースでDoCの例を示します。
ケースは以下とします。
製品(小型電気電子機器)をPE袋に入れて、紙箱(段ボール)に入れて、紙ハニカム
緩衝材を入れている。紙箱は、接着剤(封止用・ホットメルト系)で接着してい
る。
製品は、附属品が仕様により、大きさが異なり、PE袋、紙箱の大きさや紙ハニカム緩
衝材の量が異なる。
包装材は、基本的に当社全製品共通で、同じ材料である。

技術文書の例示
技術文書番号:TD_PPWR_xyz
技術文書(Technical Documentation) 技術文書番号:TD_PPWR_xyz
1.包装の一般的な説明およびその使用目的(General description of the packaging and its intended use):
-包装の構成: 本包装材は、小型電気電子機器の出荷および流通を目的とした複合包
装セットである。主な構成要素は以下の通り。
(i)PE袋(内装用)
(ii)段ボール紙箱(外装用)
(iii)紙ハニカム緩衝材(製品保護用)
(iv)ホットメルト系接着剤(紙箱の封止・接着用)
-製品バリエーションおよび適用範囲: 内装する小型電気電子機器本体および附属品
は仕様によりサイズが異なるため、それに伴いPE袋および段ボール紙箱の寸法、なら
びに紙ハニカム緩衝材の使用量に個別のバリエーションが存在する。
-ただし、使用される包装材料(PE、段ボール原紙、紙ハニカム、ホットメルト接着
剤)の材質・化学組成については、当社全製品で共通の標準材料を採用している。
-使用目的: 流通・輸送時の衝撃保護、防塵、および製品品質の維持。
2.該当する場合、適用された調和規格、その他の関連仕様、または適合性評価手続き
を証明するために使用された技術仕様への言及(References to harmonised standards, other relevant specifications, or technical specifications used)
:
-適用規格・ガイドライン:
・EN 13427(包装と包装廃棄物に関する要求事項の適用に関する一般基準)
・EN 13430(材料のリサイクルによる回収が可能な包装の要求事項)
・EN 13432(堆肥化および生分解による回収が可能な包装の要求事項 - 一部関連要
素)
-社内技術規格:
・包装材環境・化学物質管理基準(Ver.3.0)
3.設計図面、製造図面、および包装の製造・構造に関する詳細な説明(Design,
manufacturing and construction drawings and detailed descriptions of the manufacturing and construction of the packaging):
-構造設計プロセスと管理: 本包装の設計は、ABC会社のISO 9001準拠マネジメント
システム(名称:ABC_MS)に統合された以下の社内規定に従って実施される。
・開発規定(規程番号:ABC-QP-DEV-01)
・設計規定(規程番号:ABC-QP-DES-02)
-設計のインプット・アウトプット:
・包装仕様は、製品の構想設計段階から構造・強度などを検討し、設計のインプット
として「設計仕様書」が作成される。
・設計のアウトプットとして、製品グループごとの寸法バリエーションを網羅した「
包装仕様書」が確定され、購買部門へ正式に発行される。
-図面・仕様書一覧:
・包装仕様書(共通材料仕様・各種寸法バリエーション一覧):Doc ID:
DWG-PK-XYZ-001 ~ 015
・緩衝構造図・組立図:Doc ID: DWG-PK-XYZ-016
4.包装の要件への適合性を証明するために実施された評価およびテストの記述、なら
びに試験報告書(Description of evaluations and tests performed, and test
reports):
-有害物質規制(PPWR第5条関連)の適合評価:
・PE袋、段ボール、紙ハニカム、ホットメルト接着剤の各部材について、サプライ
ヤーから提供された成分分析表(CoA)およびRoHS/REACH対応証明書に基づき、
鉛、カドミウム、水銀、六価クロム等の重金属含有量が規制値未満であることを確認
・評価している(テストレポート番号:TR-2026-CH-001)。
-包装の最小化・軽量化(PPWR第10条関連)の評価:
・小型電気電子機器のサイズおよび附属品の多様性に対し、過剰包装とならないよ
う、緩衝性能試験(落下試験・振動試験)を網羅した設計評価を実施し、必要最小限
の容積・重量に最適化されていることを検証済み(試験報告書番号:
TR-2026-PKG-005)。
5.適合宣言書およびモジュールA(内部生産管理)に基づく製造プロセスの詳細、な
らびに品質マネジメントシステムの適用に関する証拠(Details of the
manufacturing process, conformity assessment module A, and evidence of the quality management system):
-適合性評価手続き:
・本包装の適合性評価は、PPWR 附属書VIIに基づく「内部生産管理(モジュールA
)」を採用している。
-品質マネジメントシステム(ABC_MS):
・製造、購買、品質保証の各プロセスは、ABC会社のISO 9001に準拠したマネジメン
トシステム(名称:ABC_MS)の下で運用・管理されている。
・特に購買プロセスにおいては、「購買規定(規程番号:ABC-QP-PUR-03)」に基づ
き、共通包装材の安定的な材質管理、サプライヤーの選定・評価、および設計仕様書
に基づく厳格な受入検査が実施されている。
・製造工程におけるトレーサビリティおよび変更管理も、ABC_MSの規定に従って維持
されている。

4.2 DoCの例
 DoCは包装材仕様ごとに附属書VIIIの項目で作成します。このDoCのコピーを輸入者
に提供します。
 小型の電気電子機器を包装して輸出するケースでDoCの例示をお示しします。

EU適合宣言書(DoC)
1.宣言書番号(Unique identification of the DoC): TD_PPWR_xyz-2026-001
2.製造者および(該当する場合)その正式代表者の名称および住所(Name and address of the manufacturer and, where applicable, its authorised
representative): 事業者名:[貴社名] (例:株式会社〇〇) 住所:[貴社の住所
] (例:東京都〇〇区〇〇 1-2-3) 連絡先:[担当部署のメールアドレス等]
3.この適合宣言は製造者の単独の責任において発行される旨の記述(This
declaration of conformity is issued under the sole responsibility of the
manufacturer): 本適合宣言書は、製造者の単独の責任の下で発行される。
4.宣言の対象(Object of the declaration - identification of packaging allowing traceability):
包装の名称・種類:汎用製品出荷用 複合包装セット(PE袋、段ボール紙箱、紙ハニ
カム緩衝材、ホットメルト接着剤)
型式・バッチ番号・製品識別等: 本包装材は当社全製品に共通して使用される標準
仕様(同一材料・同一構成)であるが、内装する製品本体および附属品のサイズ・形
状の多様性に伴い、PE袋、段ボール紙箱の寸法、および紙ハニカム緩衝材の使用量が
個別の製品仕様に応じて変動する。
(対象となる代表的な製品グループコード:XYZ-Series 全般)
5.上記の宣言の対象は、関連するUnionの調和法規に適合している旨の記述(The
object of the declaration described above is in conformity with the relevant Union harmonisation legislation): 上記に特定した包装は、以下の
EU規則の関連要件に適合している。
-欧州議会および理事会規則(EU) 2025/40(包装および包装廃棄物規則:PPWR)
6.適合性の実証に使用された関連する調和規格の番号、または適合性が宣言されてい
るその他の技術仕様への言及(References to the relevant harmonised standards used or references to the other technical specifications in relation to which conformity is declared): 本包装の適合性評価にあたり、以下の規格およ
び技術仕様を適用した。
-EN 13427(包装と包装廃棄物に関する要求事項)
-EN 13430(材料のリサイクルによる回収が可能な包装の要求事項)
-EN 13432(堆肥化および生分解による回収が可能な包装の要求事項 - 該当部分)
-社内技術仕様書:包装材の重金属等含有量管理基準(Ver.3.0)および有害化学物質
管理手順
7.該当する場合、通知機関(Notified Body)の名称、番号、および実施した介入の
説明(Where applicable, the notified body ... name, number, description of
intervention): 該当なし(本包装の適合性評価は、PPWR 附属書VIIに基づく内部
生産管理(モジュールA)により実施したため、通知機関の関与はない。)
8.追加情報(Additional information):
-本包装に使用されているPE袋、段ボール、紙ハニカム緩衝材、およびホットメルト
接着剤は、いずれもPPWR第5条(包装における有害物質の制限)の基準を満たしてい
る。
-包装の最小化要件(PPWR第10条)については、製品および附属品のサイズ差異にか
かわらず、機能性・安全性を損なわない範囲で容積および重量を必要最小限とする設
計原則(Optimization of volume and weight)を遵守している。
-関連する技術文書(Technical Documentation)は、PPWR附属書VIIに基づき「
TD_PPWR_xyz」として保管・管理されており、市場監視当局からの要請に応じて提示
される。
【署名ブロック】 以下を代表して署名(Signed for and on behalf of): [貴社名
] (例:株式会社〇〇)
発行場所(Place of issue):日本国 東京都 発
行日(Date of issue):2026年9月9日
氏名(Name):[署名者の氏名]
役職(Function):[役職名 例:品質保証部長]
署名(Signature): (ここに自筆署名またはデジタル署名)

4.3FAQ
FAQに具体的な事例があります。
(a)包装または包装済み製品について、単一の適合宣言書を作成すれば十分でしょう
か。それとも、必要なすべての適合宣言書を1つの文書としてまとめた書類を作成す
ることが求められますか。

包装製品が、食品と接触することを意図したプラスチック材料および製品に関する規
則(EU)第10/2011号第15条に基づく適合宣言や、食品接触材料に関する規則(EC)第
1935/2004号第16条など、EU適合宣言を要求する複数のEU法令の対象となる場合、す
べてのEU法令に対して単一のEU適合宣言を作成することが可能です。当該宣言に
は、対象となるEU法令およびその公布参照番号を明記しなければならない。また、関
連する個別のEU適合宣言をまとめた書類集で構成されてもよい。
したがって、製造業者は、単一の適合宣言を作成する必要性を判断する際に一定の裁
量権を有する。ただし、単一の適合宣言を作成する場合、包装と包装された製品を明
確に区別しなければならない。製造業者は、単一の適合宣言書を、個別の適合宣言書
を集めた書類として提出するか、単一の文書として提出するかを決定することができ
る。単一の文書として提出する場合であっても、包装製品および包装材に対する適合
性評価は、依然として別々に行い、別々に提示しなければならない。

(b)適合性評価は、ボトル、キャップ、ラベルといった包装の各部分ごとに作成すべ
きか、それとも包装ユニット全体に対して作成すべきか?

適合性評価は包装ユニット全体に対して実施し、適合宣言書も包装ユニット全体につ
いて作成しなければなりません。つまり、ボトル、キャップ、ラベルで構成される包
装ユニットの場合、ユニット全体については単一の適合性評価および関連する適合宣
言書で十分ですが、その宣言書には、当該ユニットを構成するすべての個別の構成部
品に関する関連情報を含める必要があります。

4.4DoC発行の義務者
EUの「ブルーガイド(The “Blue Guide” on the implementation of EU product
rules)」(*12)で解説されていますが、CEマーキングの適合宣言は「製造業者(
Manufacturer)」、または指令によって認められている場合は「正式に任命された
EU域内の代理人(Authorized Representative)」しかできません。「製造者」
は、EU域内だけでなく域外国の製造者を含まれます。
OEMの場合は、自社ブランド(OEM供給を受ける側)で製品を市場に流通させる者
や、設計・製造を外部に委託して自らの名前や商標で上市する者が、EU法上の「製造
者(Manufacturer)」に該当し、その全責任を負うことになります。

EU域外(第三国)から「包装された電気製品」を輸出した場合、PPWRにおける法的責
任の主たる対象は、EU域内でその製品を最初に受け取って流通させる「インポー
ター(輸入者)」になります。
ただし、輸出元である日本の事業者(ブランドオーナー)であっても、インポー
ターや現地の市場監視当局からPPWRへの適合証明を強く求められるため、完全に無関
係ではいられません。
輸出に関わる経済事業者のそれぞれの責任と実務は、以下の通りです。

(1) EU域内の「輸入者」が負う責任
EU側に法的な拠点を持つ輸入者は、PPWRの役割を担います。
-適合性の検証義務:
輸入者は、輸入する包装材がPPWRの基準(重金属規制、リサイクル性、過剰包装の禁
止など)を満たしていること、また製造者が「技術文書(TD)」や「適合宣言書(
DoC)」を正しく作成していることを市場に流通(上市)させる前に検証する義務を
負います。
-書類の保管義務:
包装材のDoCのコピーを、使い捨て包装の場合は5年間、再利用可能包装の場合は10年
間保管し、当局の要求に応じて提出できるようにしなければなりません。
-トレーサビリティの表示:
包装材(または添付書類)に、輸入者自身の名称、登録商標、住所などの連絡先を表
示する義務があります。

(2)日本の「輸出元(ブランドオーナー・自社電気製品の製造者)」の責任
日本の電気製品メーカーは、PPWR上の定義において「製品の製造者(Manufacturer
)」または「生産者(Producer)」とみなされるケースが一般的です。
自社ブランド(商標)を付して包装した製品を輸出する場合、直接EU法による罰則を
日本で受けることはありませんが、適合していない包装はEUの税関で差し止められる
(輸入拒否される)リスクがあります。そのため、実務上は以下の責任を果たす必要
があります。
-技術文書とDoCの用意:
今回のケースでは「外部資材メーカーから購入した包装材」ですので、その資材
メーカーからPPWRに適合していることを証明するデータやDoCを必ず事前に入手
し、EUの輸入者に共有(提供)できるようにしておく必要があります。
-包装最小化(過剰包装の禁止)の実践:
資材メーカーがいくら適合品を販売していても、それを「どう使って梱包するか」は
日本側の責任です。製品に対して箱が大きすぎる(無駄な空隙スペースが多い)場合は
PPWR違反となり、輸出後に問題化します。

(3)EPR(拡張生産者責任)の登録・費用負担
PPWRでは、製品が廃棄物(ゴミ)になった際の処理費用を誰が払うかという「生産者(
Producer)」の責任も規定されています。
?基本はEUの輸入者が負担:
製品がEUに到着した時点で、最初にそれを市場に流通させる輸入者が、各国ごとの
EPRスキーム(回収管理団体など)に登録し、包装の重量に応じたリサイクル料金(
EPR費用)を支払う必要があります。
?日本側への影響:
輸入者から「包装材の正確な重量や材質(プラスチック、紙、段ボールのそれぞれの
グラム数など)」のデータ提出を求められます。これを提出できないと、現地での
EPR登録ができず、製品の販売が不可能になります。

日本から包装済みの電気製品を輸出される際は、次の2つが必要です。
(i)包装資材メーカーから「PPWR適合宣言書(DoC)」および「材質・リサイクル性に
関する技術仕様書」の提供を受ける。
(ii)梱包状態の「各包装資材の材質ごとの重量データ(例:外箱段ボール〇g、内装
PE袋〇gなど)」をリスト化し、EUの輸入者へ共有できるようにする。

(一社)東京環境経営研究所 松浦 徹也

当解説内容は2026年8月末に入手した情報に基づいて、筆者の知見、認識に基づいて
のものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規
制の解釈は必ず原文を参照してください。

引用先
*1:PPWR
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng
*2:実施規則案
https://webgate.ec.europa.eu/regdel/#/implementingActs/18147?lang=en
*3:規則(EU) 2024/3190
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/3190/oj/eng
*4-1:FAQ
https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/ad14cb8f-8d4f-11f1-9262-01aa75ed71a1
*4-2:FAQ
https://environment.ec.europa.eu/publications/faq-packaging-and-packaging-waste-regulation-ppwr_en
*5:PPWD
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A01994L0062-20180704
*6:環境移行・エネルギー省
https://www.ecologie.gouv.fr/
*7:Zentrale Stelle Verpackungsregister
https://www.verpackungsregister.org/
*8:VerpackDG
https://www.verpackungsregister.org/ich-moechte-wissen-was-seit-dem-12-august-2026-gilt
*9:MASE
https://www.mase.gov.it/
*10:CONAI
https://www.conai.org/
*11:国連プラスチック条約
https://www.unep.org/inc-plastic-pollution
*12:ブルーガイド
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=oj:JOC_2022_247_R_0001

(2026年9月(2))

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