top of page
JEMAI.jpg

WBCSDによるGCPについて~ 企業活動や製品の循環性に関する情報開示枠組み ~

1.WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)によるGCP(ビジネスのため
のグローバル循環プロトコル)について】~ 企業活動や製品の循環性に関する情報
開示枠組み ~

はじめに:
 循環型経済(CE:サーキュラーエコノミー)は、温暖化ガスネットゼロ、自然再興
(ネイチャーポジティブ)、汚染の削減といった環境課題の解決に不可欠であり、レ
アアース等の重要原材料の確保といった資源リスク対策においても重要になっていま
す。EUを中心に資源循環に関する企業や製品情報の開示や規制措置が進められてお
り、日本の輸出企業を中心に対応の必要性が増大する方向です。
 しかしながら循環型経済の分野は、製品使用後の収集・解体・再使用/リサイクル
といった産業の静脈側との連携も必要であり、指標を含めた評価手法や情報開示の国
際的枠組みは構築されていません。そこでWBCSD*1は、組織の循環型パフォーマンス
との影響を測定、管理、伝達するための枠組みとして、国連環境計画(UNEP)のOne
Planet Network*2と協力しGCP(Global Circularity Protocol)*3,4を開発し2025年
11月11日に公表しました。

GCPが誕生した経緯と狙い:
 環境課題に対する情報の開示の取り組みとしては、TCFD(気候関連財務情報開示タ
スクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)*5や
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Nature-related Financial Disclosures)*6が国際的枠組みとして運用されている。しかしなが
ら、循環型経済の取り組みの情報開示の仕組みについては、国際的なルール構築には
至っておらず、今後、製品やサービスの差別化や金融機関等への企業価値エビデンス
提示を考慮すると、国際的に合意された枠組みが必要になると思われる。
 一方、EUは循環型経済への移行を目指し、エコデザイン規則(ESPR)*7、ELV規則
(従来のELV指令を改定作業中)*8、電池規則*9、WFD(廃棄物枠組み指令)*10、
CRMA(重要原材料法)*11等の法制化とDPP(デジタル製品パスポート)*12等で循環
性を含めた多くの環境・持続性に関する情報開示を進めている。特定の地域主導の考
え方で企業の循環型パフォーマンスの開示が求められた場合、その市場への輸出企業
の対応に影響が生じる可能性がある。
 これまで、国際的な循環型経済の取り組み評価指標としては、CTI-WBCSD(循環性
指標:Circular Transition Indicator)*13、ISO59020(企業の循環性の測定・評価
規格)*14やCSRD(企業サスティナビリティ報告指令:Corporate Sustainability Reporting Directive (EU)2022/2464)*15等があるが、国際的に合意されたものはな
かった。G7広島サミット(2023年)で採択された、CEREP(循環経済及び資源効率性原
則:Circular Economy and Resource Efficiency Principle)*16を経て、WBCSDが
UNEP(One Planet Network)と協力し、非常に多くの関係者を(政府、研究機関、
NGO、企業)交えて、GCPを開発した。

GCPの目的と特徴:
 GCPは、評価対象組織の循環型パフォーマンスとその影響を測定、管理、伝達する
ための枠組みであり、実施することで、組織の循環型経済への対応状況の明確化と次
のステップへの課題把握が可能です。組織がGCPを実施することで組織戦略や運営の
なかに循環性を組み込むことが可能であり、企業活動が線形システムからスパイラル
な循環システムに移行することが期待されています。
 GCPの特徴としては、① グローバルな枠組みであり、循環型パフォーマンスおよび
インパクト評価のための標準化されている ② 企業、環境、経済、社会システムに
相互に結び付いた評価が可能 ③ WBCSD-CTIを基盤として、GRI、ISO59020等の相互
運用性を確保している ④ GCPは業界、企業規模、地域を問わず、それぞれのレベル
で適用可能 ⑤「循環性」を評価するにあたり、企業活動のどの段階でも適用し、循
環性パフォーマンスとインパクト評価が可能 ⑥ WBCSDとUNEPが共同で開発し、ビジ
ネス、行政、科学の各分野の専門家の意見を取り入れ、信頼性、包括性、適用性を確
保している などがあります。

GCPの構成*3,4:
 GCP実施プロセスは「GCP User Journey」と呼ばれており、① 枠組みの決定 ⇒②
循環型評価の準備 ⇒ ③ 循環型アプローチの進捗状況を測定・把握 ⇒ ④ 循
環型パフォーマンスと影響の管理 ⇒ ⑤ 外部ステークホルダーとのコミュニ
ケーション とされています。
実務運営上は、①から始まる線形プロセスだけではなく、③から②とか④から②に戻
ることが可能なプロセスとなっている。
 各プロセスの概要を以下にまとめます。
① 枠組みの決定:
 循環型パフォーマンスとインパクト評価の「目的」と「適用ケース」を特定しま
す。この段階では、実施の目的を明確にし、適切な評価レベルを選択するとともに、
関係すべきステークホルダーを特定します。
② 循環型評価の準備:
 評価を行うにあたり、「境界」を定義し、バリューチェンを可視化したうえで、対
象の「リスクと機会」を特定します。GCPでの物質フローについて、物質の優先順位
付けは、インパクト、リスク、機会、およびバリューチェン上での重点領域に焦点を
あて決定します。
③ 循環型アプローチの進捗状況を測定・把握:
 指標を選定し各種評価用データを収集します。循環型パフォーマンスおよび影響測
定手法は、気候、自然、社会公平性、金銭価値の各分野で測定し、循環性を目指す戦
略と測定結果を結び付け関連化します。
④ 循環型パフォーマンスと影響の管理:
 結果を分析し、改善すべきポイントの優先順位をつけ、実際の対応プランの策定等
を行います。
⑤ 外部ステークホルダーとのコミュニケーション:
 規制当局、企業間取引の顧客、サプライヤー、投資家を含む外部ステークホルダー
と結果を共有します。体系化された報告・開示により、外部ステークホルダーの意思
決定に役立つ報告を提供します。

 GCP評価は、上記の5段階による一連のステップです。これは評価を実施する組織
がどの段階に位置しても実施できるようになっています。アプローチに関しては、組
織の中の単一製品の評価から、組織全体の評価まで段階的に発展させることが可能と
なっています。循環性パフォーマンス及びインパクト評価は、発展しつづける領域で
あり、循環型経済のニーズを反映しつつ、財務報告やサスティナビリティ報告で採用
される、一般会計報告で用いられる仕組みを参考にしており、「完結性」、「一貫
性」、「相互運用性」、「包括性」、「モジュール性」、「簡潔性」および「実用
性」を念頭に置いています。循環性を向上するために継続的評価と改善プロセス継続
が必要になります。

GCPを実施するメリット:
GCPを利用することで、循環型戦略を測定可能なものにすることができるようになる
とともに、いくつかのメリットが期待されます。
・複雑なバリューチェン全体での物質フローを測定し管理することで、資源供給リス
ク等への影響を低減するとともに、コンプライアンス遵守と信頼性の高い情報開示に
対応
・意思決定に際し、有用な比較可能なデータを作成し、透明性と信頼性を強化するこ
とで、循環型パフォーマンスとその影響に関する規制や資本逃避等のリスク低減
・製品・サービス・ビジネスモデルにおける循環型イノベーションの機会を特定し、
資源効率の向上を通じて、資源制約のある市場での企業価値を創出

GCPと日本の関り*17,18:
 日本政府は、循環型経済に関する国際ルール形成に際し、環境省と内閣府が連携
し、G7広島サミットでのCEREP採択(2023年)への主導的役割を果たすとともに、
WBCSDのGCP開発には、民間主導での開発に連携し、ビジネス主導によるルール作りに
参画してきた。これにより、日本企業への投資促進や世界の循環型経済市場における
日本企業の競争力強化を目指してきている。GCP開発には、2024年に環境省とWBCSDで
開発協力文書を締結し、Business, Policy and Science Advisory Committeesに、ト
ヨタ自動車、パナソニック、東京大学とともに参画している。

GCPの今後:
 今回のGCPは初版であり、循環性の測定と推進を進めるうえでのコンセプト的な概
念、方法論、指標を示したものです。従って、循環性に関しすべてを包括したもので
はありません。それぞれの組織が取り組みを着手して、その結果をフィードバックして
GCPを継続的に改善するためにインプットしていくことが必要です。
 温室効果ガスに関する情報開示である、TCFDが版を重ね進化したように、GCPも今
後、領域の拡大やステークホルダーの意見の反映を通じて改善していくと思われま
す。
 
企業の留意点:
 原材料、部品、製品を製造する事業者は、バリューチェンのうち、消費者が使用す
るまでに注目している場合が多い。しかしながら、今後、「循環性」という括りで、
継続的な改善や情報開示が求められると、これまでは縁遠い、社会の静脈業界との連
携が必要となると思われます。特に輸出製品については、地理的に離れた消費地での
「製品の使用後」を把握する必要があり、現地の状況を把握することが求められるよ
うになります。

(参考)WBCSDとは:
 WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発
のための世界経済人会議)は、経済界からの「持続可能な開発」についての見解を提
言することを目的として、環境保全、公平な社会と経済発展に関する国際的関心と必
要な行動を促すために創設された団体。本部はスイス(ジュネーブ)で約35か国から
250社以上が参加しています。現会長は、Mr.Peter Bakker (President & CEO) エグ
ゼクティブ議長はSyensqo社(ベルギー)CEOのMs. Ilham Kadriで、日本からは、ト
ヨタ自動車、パナソニック、SOMPOホールディングを含む21社が参加しています。

(参考資料)
(*1) WBCSD
https://www.wbcsd.org/
(*2) UNEP “One Planet Network”
https://www.oneplanetnetwork.org/
(*3) WBCSD ”WBCSD and One Planet Network announce launch of the Global Circularity Protocol for business (GCP) at COP30” 2025年11月11日
https://www.wbcsd.org/news/wbcsd-and-one-planet-network-announce-launch-of-the-global-circularity-protocol-for-business-gcp-at-cop30/

(*4) WBCSD “A global framework to measure, manage and communicate business circularity”
https://www.wbcsd.org/resources/a-global-framework-to-measure-manage-and-communicate-business-circularity/
(*5) TCFD recommendations
https://www.fsb-tcfd.org/recommendations/
(*6) TNFD HP
https://tnfd.global/
(*7) Implementing the Ecodesign for Sustainable Products Regulation (EU commission HP) https://green-forum.ec.europa.eu/implementing-ecodesign-sustainable-products-regulation_en

(*8) End-of-Life Vehicles (EU commission HP) https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/end-life-vehicles_en

(*9) Batteries (EU commission HP)
https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/batteries_en
(*10) Waste Framework Directive (EU commission HP) https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/waste-framework-directive_en

(*11) European Critical Raw Materials Act (EU commission HP) https://commission.europa.eu/topics/competitiveness/green-deal-industrial-plan/european-critical-raw-materials-act_en

(*12) EU's Digital Product Passport: Advancing transparency and sustainability https://data.europa.eu/en/news-events/news/eus-digital-product-passport-advancing-transparency-and-sustainability

(*13) CTI-WBCSD ver4.0
https://www.wbcsd.org/resources/circular-transition-indicators-v4/?submitted=true

(*14) ISO 59020:2024 Circular economy ? Measuring and assessing circularity
performance(ISO規格の本文ダウンロードは有償です)
https://www.iso.org/standard/80650.html
(ISO59020の概要は、日本規格協会HPの解説を参照ください)
https://jis.eomec.com/iso/iso-59020_2024-03#gsc.tab=0
(*15) Corporate sustainability reporting (EU commission HP) https://finance.ec.europa.eu/financial-markets/company-reporting-and-auditing/company-reporting/corporate-sustainability-reporting_en

(*16) CEREP
https://www.meti.go.jp/information/g7hirosima/energy/pdf/Annex002.pdf
(*17) 環境省プレスリリース「ビジネスのためのグローバル循環プロトコル(GCP)」
の初版公表について 2025年11月12日
https://www.env.go.jp/press/press_01698.html
(*18) 内閣府/環境省 資源循環の国際ルール形成
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/iinkai3/economysystem_5/siryo6-5.pdf 
 
(国際化学物質管理支援センター)

(2026年7月)

bottom of page