
EPR制度の潮流 (その2 アメリカの状況)
EPR(Extended Producer Responsibility:拡大生産者責任)は、1990年にスウ
ェーデンのトーマス・リンクヴィスト博士によって提唱されました。当時、廃棄物処
理コストの急騰やリサイクル市場の未成熟といった課題に直面していた自治体に
とって、EPRは汚染回避と財政負担軽減を両立させる画期的な解決策として注目を集
めました。
1991年には、世界初の具体的な法規制としてドイツで「包装規則」が施行され、そ
の後、OECDのガイドライン策定を経て世界的な潮流へと発展しています。EPRの対象
品目は、有害性や不法投棄のリスク、資源価値の高さなどに基づき選定されます
が、現在、世界共通の最優先課題となっているのが「プラスチック包装材」です。
本稿では、プラスチック包装材を巡る規制を中心に、昨今動きが加速しているアメ
リカのEPR制度(EPRの法規制)の最新動向を解説します。
1.アメリカ連邦法のEPR制度の潮流
連邦レベルのEPR制度を巡っては、政党間でスタンスが明確に分かれています。民主
党は「汚染者負担原則(Polluter Pays Principle)」に基づき、生産抑制と企業の
法的・金銭的責任の強化を重視しています。対して共和党は、一律の規制や課税には
消極的で、民間主導による「リサイクル技術(ケミカルリサイクル等)の革新」や「
既存インフラの整備」を優先すべきとの立場です。
2026年2月末現在、連邦レベルで成立したEPR法は存在しませんが、重要な法案がい
くつか提出されています。ここでは、今後の動向が注目される主要法案を紹介しま
す。
1.1 リサイクル技術革新法案(Recycling Technology Innovation Act(H.R. 6566)
)
H.R. (House of Representatives(下院))6566は(*1)、2025年末に提出さ
れ、米国連邦議会で審議されている法案です。この法案の最大の目的は、ケミカルリ
サイクル(高度リサイクル・Advanced Recycling)を「ゴミを燃やす行為(焼却
)」から「製品を生産する行為(製造)」へと、法的な定義を大きく原料(フィード
ストック)変更することにあります。
(1) 法案の要点
この法案は、主に大気浄化法(Clean Air Act)を改正して、ケミカルリサイクル施
設の扱いを変えようとしています。
(i)焼却施設定義からの除外: ケミカルリサイクル(熱分解、ガス化、溶媒抽出など
)を行う装置を、大気浄化法上の「固体廃棄物焼却ユニット(Solid Waste
Incineration Unit)」の定義から正式に除外します。
(ii)「製造プロセス」への再分類: 廃棄プラスチックを分子レベルの原料に変換する
工程を、化学品や素材を生産する「製造(Manufacturing)」として再定義しま
す。
(iii)「製品」の定義(50%ルール): 出力物のうち、質量ベースで50%以上が「製品
(工業原料や消費者向け素材)」として販売・利用される場合、その施設を製造施設
として認めます。
但し、電気や熱、スラグなどは製品に含めません。
(iv)規制の合理化: 焼却炉としての厳しい排出基準(Section 129)ではなく、製造
工場としての基準(Section 111/112)を適用することで、許認可のスピードを速
め、運営コストを削減します。
(2)法案のケミカルリサイクルの解釈
この法案では、ケミカルリサイクルの解釈は次のように、大きく変えることになりま
す。
(i)「廃棄物処理」から「高度な資源製造」へ
これまでは「ゴミをどうにかして処分する技術」という位置づけでしたが、今後は石
油に代わる「持続可能な原材料の製造」という、戦略的な製造業の一部として位置づ
けられます。
(ii)マスバランス方式の法的裏付け
「製造業」として認められることで、工場内でバージン原料とリサイクル材を混ぜて
管理する「マスバランス方式」が、法的に一貫性のある計算手法として正式に認めら
れやすくなります。これは、再生材含有率を主張する際の強力な法的エビデンスとな
ります。
(3) マスバランス方式の論点
マスバランス方式は、「リサイクル原料を、特定の製品に書類上で割り当てる仕組
み」です。
(i) マスバランス方式の考え方
化学工場では大きなタンクに「原油由来の原料」と「リサイクル由来の原料」が混ぜ
て投入しますが、製品プラスチックの分子について、「これはリサイクル、これは原
油」と分けることは不可能です。
このため、「投入したリサイクル原料は、どれか特定の製品に100%割り当てる」とい
う方式を採用しています。
具体的な例
(a)製造プラントに「原油原料 90t」と「リサイクル由来原料 10t」を混ぜて投入し
たとします。
(b)出来上がった100tの製品のうち、特定の10t分を「100%リサイクル素材」として販
売し、残りの90tを「通常品」として販売します。
(c)実際にはすべての製品に少しずつリサイクル分子が混ざっていますが、「トータ
ルの量は合っている」ので、これを認めるのがマスバランス方式です。
(ii)メリット
(a)既存設備の有効活用: リサイクル専用の工場をゼロから建てる必要がなく、既存
の巨大な化学コンビナートをそのまま使えます。
(b)品質の安定: 従来の石油製品と全く同じ品質(高純度・高耐久)の「リサイクル
製品」が作れるため、医療機器や食品容器にも転用可能です。
(c)導入のスピード: 設備投資を抑えられるため、企業がリサイクル製品の生産をす
ぐに開始できます。
(iii)環境団体などの批判
民主党の一部や環境団体は、「マスバランス方式はグリーンウォッシングだ」として
強く反発しています。主な批判内容は以下の通りです。
(a)実態との乖離(サーマルリカバリー)
「リサイクル」と称しながら、実際はプラスチックをガスや油に変えて燃やす(焼却
)だけであり、循環ではないという指摘。
(b)歩留まりの低さ
投入量に対し、実際にプラに戻る割合(収率)が数%と極めて低い場合、リサイクル
成功と謳うのは誇大広告である。
(c)物理的な不在
「再生材50%」と表記されても、その製品自体に再生分子が一切含まれない可能性が
あり、消費者を欺いている。
(d)リデュースの阻害
この技術を口実に、本来最も優先すべき「プラスチック削減(リデュース)」の
議論が疎かになっている。
(iv) FTC(連邦取引委員会)のグリーンガイド
FTCの「グリーンガイド(*2)」は、企業が製品のリサイクル性、再生材含有、分解
性などの環境特性について広告やラベルで主張する際の参考になります。また、
FTCは、消費者・事業者向けに環境主張に関するアドバイス(*3)も公開していま
す。
FTCの基本原則は「消費者が誤解しないこと」です。ポイントは以下の通りです。
(a)「リサイクル可能(Recyclable)」の厳格な基準
その製品を回収・処理できる施設が、その製品が販売される地域の「大多数(少なく
とも60%以上)」の消費者に提供されていなければ、「Recyclable」と表示すること
はできません。インフラの存在が求められます。
60%に満たない場合は、「一部の地域でリサイクル可能です」といった限定的表示(
Qualified Claims)を添える必要があります。
(b)「再生材含有(Recycled Content)」とマスバランス方式
再生材を〇%使用していると謳う場合、その供給元までのトレーサビリティを保持し
なければなりません。
ケミカルリサイクル等のマスバランス方式を用いる場合は、「物理的に再生材が含ま
れているとは限らない」旨の明確な注釈(ディスクロージャー)を近接して表示する
ことが強く推奨されています。
(c)「環境に優しい(Environmentally Friendly)」等の曖昧な表現の禁止
「エコ」「サステナブル」「グリーン」といった広範で曖昧な表現は、具体的な根拠(
LCAデータ等)がない限り、原則として「欺瞞的(Deceptive)」とみなされます。
(d)第三者認証の適切な使用
独自のマークを勝手に作って「認証済み」とすることはできません。ISCC PLUSや
ULなどの独立した第三者機関による認証であることを明示し、その認証がカバーする
範囲(素材のみ、あるいは工場全体か等)を正確に書く必要があります。
ケミカルリサイクルを「製造」とする法改正は、州レベルでも賛同を得ています。
(a)赤い州(共和党地盤:15州)
リサイクルを「環境保護」以上に「製造業の振興・雇用創出・規制緩和」の観点から
推進している州です。
-テキサス州
-アリゾナ州
-フロリダ州
-ジョージア州
-アラバマ州
-ミシシッピ州
-ルイジアナ州
-アーカンソー州
-オクラホマ州
-サウスカロライナ州
-テネシー州
-インディアナ州
-アイオワ州
-ケンタッキー州
-ウエストバージニア州
(b)パープル・ステート(拮抗州:7州)
化学産業の拠点が多く、超党派での経済成長を重視して法制化した州です。
-オハイオ州
-ペンシルベニア州
-ミシガン州
-ウィスコンシン州
-ノースカロライナ州
-バージニア州
-ニューハンプシャー州
(c)青い州(民主党地盤:3州)
環境保護の観点から「高度リサイクルも活用すべき」との判断、あるいは産業維持の
ために法制化した州です。
-イリノイ州
-コネチカット州
-ロードアイランド州
1.2 Recycled Materials Attribution Act (RMAA)(リサイクル材料属性法案:H.R.
7502)
RMAA は、2026年2月12日に米連邦下院で提出された超党派の法案です。
(1)RMAAの概要
RMAAは、全米でバラバラになっている「リサイクル素材使用」などの表示(マーケ
ティング・クレーム)の定義を連邦レベルで統一し、企業の法的リスクを軽減すると
同時に、高度リサイクル技術を促進することにあります。
(i)連邦統一基準の確立
カリフォルニア州やニューヨーク州など、州ごとに「リサイクル可能」や「再生材〇
%使用」と表示するための基準が異なっています。RMAAはこれを連邦政府の統一定義
に置き換えることで、全米共通のパッケージデザインを可能にすることを目指してい
ます。
(ii)マスバランス方式の公認
ケミカルリサイクルで投入した廃プラと製品の比率を計算で割り振る「マスバランス
方式」を連邦法として正式に認めて、複雑なサプライチェーンを持つ化学・素材メー
カーが再生材の含有率を法的に証明しやすくします。
(iii)第三者認証システムの導入
企業が「再生材を使用している」と主張する場合、政府が認めた第三者機関による認
証を受ける仕組みを構築します。これにより、いわゆる「グリーンウォッシング(見
せかけの環境配慮)」を排除し、消費者の信頼を回復させます。
(iv)FTC(連邦取引委員会)「グリーンガイド」の更新
環境に関する広告表示の指針であるFTCのグリーンガイド(Green Guides)を更新し
て、「これまでグレーゾーンだった高度リサイクル(ケミカルリサイクル)やマスバ
ランス方式を、国が正式に「正しい広告」として認めるためのルール作りを義務付け
ます。
この法案が成立すれば、州ごとに異なるラベル規制を個別に調査・対応するコストが
大幅に削減されます。また、日本が得意とするケミカルリサイクル技術による再生材
が、米国市場で「正式な再生材」としてマーケティングに使用できるようになりま
す。
この法案は提出されたばかりの最新案件であるため、米連邦議会公式サイト(*4)で
は法案テキストは確認できませんが、業界団体Recycling Leadership Council
(RLC)の解説(*5)やPlastics Today (業界ニュース)(*6)のリリースで詳細を確認で
きます。
RLCは、プラスチック廃棄物の削減と、米国のリサイクル能力向上のための実用的か
つ超党派的な解決策の推進に尽力する、業界横断的な連合体です。
2.アメリカ州法のEPR制度
EPR制度は、連邦法は法案段階ですが、州法レベルでは、運用されています。典型的
な州法をご紹介します。
2.1赤い州:テキサス州法:HB 1953とHB 3060
(1) HB 1953
HB1953(Relating to the conversion of plastics and other recoverable materials through pyrolysis or gasification. 熱分解またはガス化を通じたプラ
スチックおよびその他の回収可能材料の転換に関する法)(*7)は、テキサス州にお
けるケミカルリサイクルの法的地位を決定づけた「革命的」な規制緩和策です。
HB 1953の要旨は以下のように、連邦法案のH.R. 6566の高度リサイクルを加速させる
先駆けとなった法律です。
(i)廃棄物からの除外: 使用済みプラスチックを「廃棄物(Solid Waste)」ではな
く、「原材料(Feedstock)」として定義しました。
(ii)施設の再定義: 熱分解(Pyrolysis)やガス化(Gasification)を行う施設
を、ゴミ処理場(Solid Waste Facility)ではなく「製造施設(Manufacturing
Facility)」として再分類しました。
(iii)「製造業」への再分類:
高度リサイクル(熱分解・ガス化など)を行う施設を、固体廃棄物管理法上の「処理
施設(Disposal/Processing Facility)」の定義から完全に除外しました。
(iv)大気規制の合理化:
廃棄物焼却炉(Incinerator)としての厳しい排出基準ではなく、通常の「化学製造
プラント(Chemical Manufacturing)」としての環境基準が適用されるようになりま
した。
(2) HB 3060
HB 1953の成功を受けてHB 3060 (Relating to the regulation of recycling and recycled products.リサイクルおよびリサイクル製品の規制に関する法)(*8)を制
定して、より実務的な課題の技術の多様化とリサイクル材の証明に対応を進めていま
す。
(i)技術範囲の拡大: HB 1953が対象としていた熱分解・ガス化に加え、ソルボリシス
(溶媒分解)やデポリメリゼーション(解重合)も正式に高度リサイクルの定義に含
めました。
(ii)マスバランス方式の公認: ケミカルリサイクル製品に再生材比率を割り当てる「
マスバランス方式」を州法として正式に認め、ISCC PLUSなどの第三者認証システム
を証明手段として推奨することをTCEQ(テキサス州環境品質委員会)に義務付けまし
た。
(iii)「再生プラスチック」の定義: メカニカルリサイクルと高度リサイクルの両方
から作られたものを、包括的に「Recycled Plastics」として法的に定義しました
テキサス州の規制当局である TCEQ(Texas Commission on Environmental Quality)
は、“Advanced Recycling”に関するWebページ(*9)で説明をしています。
2.2青い州:カリフォルニア州:プラスチック汚染防止および包装材生産者責任法(
SB54 Plastic Pollution Prevention and Packaging Producer Responsibility
Act)
カリフォルニア州は、環境に厳しい規制をしていることは知られていますが、
EPR制度は全米で一番厳しいと言われるSB54(*10)で規制をしています。
SB54の制定背景は、大きくは次項です。
(i)カリフォルニア州の埋立地に廃棄されるゴミの25%?50%は包装材が占めており、こ
れらが海洋流出することで生態系や公衆衛生に多大な悪影響を及ぼしている。
(ii)これまで年間4億ドル以上にのぼる清掃・処理費用は納税者が負担してきた
が、EPR制度を採用して、製品のライフサイクル全体(設計から廃棄まで)の責任を
生産者に負わせ、コストを「原因者」である生産者に転換させる。
SB 54は単なるリサイクルの推奨ではなく、法的拘束力のある以下の目標を生産者(
ブランドオーナー等)に、2032年までの3つの核心的な数値目標を課しています。
(i)ソース・リダクション(発生抑制)25%:
2032年までに、プラスチック包装材の「重量」および「個数」の両方を2023年比で
25%削減しなければなりません(軽量化だけでなく、リユースへの転換が必須)
(ii)100%リサイクル可能・堆肥化可能:
2032年までに、州内で販売されるすべての包装材(プラスチックに限らない)が、実
際にリサイクルまたは堆肥化可能である必要があります。
(iii)リサイクル率 65%:
2032年までに、シングルユース・プラスチック包装材のリサイクル率を65%以上に引
き上げる必要があります。
(1)日本の輸出者が留意すべき主要条項( §42040?42082)
カリフォルニア州に拠点がなくても、ブランドオーナーであれば実質的な「生産者」
とみなされる点に注意が必要です。
(i)生産者の定義( §42041)
規制対象となる「生産者」は、以下の優先順位で決定されます。
-製品を製造し、そのブランドや商標を所有・ライセンス供与している者。
-州内に対象者がいない場合、そのブランドの所有者または独占的ライセンシー。
-それもいない場合、製品を州内に輸入する者。
-ブランドを持つ日本企業は、現地の輸入業者(ディストリビューター)とどちらが
法的責任を負うか、契約上で明確にする必要があります。
(ii) CAAへの加入義務(§42051)
2024年1月1日以降、すべての生産者は「生産者責任組織(PRO)であるCircular
Action Alliance(CAA)への加入が義務付けられています。未加入の生産者の製品
は、州内での販売や輸入が一切禁止されます。
(iii) データの報告と費用負担(§ 42051.3、§ 42052、§ 42064)
2023年以降の販売実績に基づき、使用した包装材の重量、材質(樹脂の種類)、ユ
ニット数のデータを報告しなければなりません。
(2)エコ・モジュレーション
エコ・モジュレーションは、「環境によい設計なら安く、悪い設計なら高く」とい
う、製品の「環境評価」で税金(拠出金)を変動させる仕組みです。SB54は、このエ
コ・モジュレーションについて、2027年の拠出金開始から最初の2年間は「簡素化さ
れた形式」で運用され、その後フルスケールの報酬・罰金システムへ移行する計画で
す。
(i)フェーズ1 (2027年?2028年): 簡素化されたエコ・モジュレーション
素材カテゴリーごとの「リサイクルしやすさ」に基づいたシンプルな料金体系からス
タートします。
(ii)フェーズ2 (2029年?): フル・エコ・モジュレーション
各社の製品個別のLCA(ライフサイクルアセスメント)データや、より詳細な設計特
性に基づいた、きめ細やかな料金調整に移行します。
エコ・モジュレーションのボーナスとペナルティの概要は以下です。
(i)ボーナス (減額)
-単一素材 (Mono-material) の採用、リユース・リフィル(詰め替え)システムの導
入。
-高いPCR(ポストコンシューマー再生材)含有率、または環境負荷の低い製造工程。
(ii)ペナルティ(マリュス (増額))
-リサイクルを妨げる設計(多層フィルム、着色された不透明PET、黒色プラスチック
など)。
-有害物質の含有(PFAS、カリフォルニア州Prop 65該当物質など)が含まれる場合。
-低いリサイクル率(州が定める素材カテゴリー別の目標未達)
3.アメリカ以外へのケミカルリサイクル定義の影響
ケミカルリサイクルを高度リサイクルとし、「ゴミを燃やす行為(焼却)」から「
製品を生産する行為(製造)」へとするアメリカの潮流は世界的に加速しています。
(i)日本の動き:国家戦略としての「製造業」化
日本は、世界でも有数の「ケミカルリサイクル先進国」を目指しており、法的な位置
づけも急速に整備されています。
日本政府は、これまでの「廃棄物処理」という守りの姿勢から、経済産業省主導で、
ケミカルリサイクル施設を「高度な化学原料製造拠点」として支援し、リサイクルを
「成長産業(製造業)」と位置づける戦略に舵を切っています。
また、環境省と経産省が共同で、「プラスチック資源循環におけるマスバランス方式
の社会実装に向けた論点整理」(*11)を公表しています。
(ii)中国
中国は「第14次5カ年計画」に基づき、プラスチックのリサイクルを「石油化学産業
の原材料確保」の手段として定義、プラスチック油化プラントを「化学コンビナート
内の標準的な製造ユニット」として承認・建設を加速させています。
(iii)韓国
資源循環基本法を改正で、熱分解施設を「廃棄物処理施設」のカテゴリーから外す、
あるいは「熱分解油製造施設」として再定義し、産業団地への入居を容易にしまし
た。
(iv)EU)
EUは、使い捨てプラスチック指令(SUP)(*12)の「使い捨てプラスチック製飲料
ボトルにおける再生プラスチック含有量に関するデータの算定、検証および報告に関
する実施規則(案)」(*13)を2026年2月に公開しました。
実施規則案は、ケミカルリサイクルにおける「再割当てルール」を法制化し、マスバ
ランス方式の計算手法を確定したものです。燃料用途や副産物をリサイクル率から除
外し、施設間でのクレジット移転を禁止するなど、厳格な運用を義務付けていま
す。さらに、最大3ヶ月単位の計算、第三者認証の受審、宣言書の5年間保管を課すこ
とで、データの透明性を担保しています。
H.R. 6566より厳格なルールですが、EUもマスバランス方式を導入するもので注目
されます。
4. 国連プラスチック条約への影響
2026年2月のINC-5.3の結果を見ても、アメリカや産油国などの「製造業重視派」
と、EUなどの「生産制限重視派」の対立は激化しています。
(i)条約の「骨抜き」リスク: アメリカが高度リサイクルを「製造プロセス」として
国内法(RMAAやH.R. 6566)で確立させることは、国際条約において「プラスチック
の生産量そのものを減らす(生産キャップ)」という議論を拒否するための強力な
カードになっています。
「リサイクル技術(製造)で解決できるので、上流の生産を縛る必要はない」という
論理が、条約の野心レベルを抑える方向に働いています。
(ii)「ライフサイクル」の定義論争: 条約案には「プラスチックの全ライフサイクル
を管理する」という文言がありますが、アメリカの動向により、「リサイクルは廃棄
段階(End of Life)ではなく、次の生産段階(New Production)の一部である」と
いう解釈が強まりました。
これにより、条約の焦点が「削減」から「(リサイクルを通じた)循環製造」へとシ
フトする要因となっています。
このように、EPR制度は論点が多くあり、まさに黎明期といえます。
次回はBRICSのEPR制度の動向をご説明します。
当説明内容は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見
解等を代弁するものではありません。法規制の解釈は必ず原文を参照してください。
引用
*1:H.R. 6566
https://urldefense.com/v3/__https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/6566/text__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRlnAAnE5$
*2:FTCの「グリーンガイド」
https://urldefense.com/v3/__https://www.ftc.gov/legal-library/browse/rules/environmental-claims-summary-green-guides__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRti1z88b$
*3:FTCの環境主張に関するアドバイス
https://urldefense.com/v3/__https://www.ftc.gov/business-guidance/advertising-marketing/environmental-claims__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRoigw7ju$
*4:Congress.gov (米連邦議会公式サイト)
https://urldefense.com/v3/__https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/7502__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRtd23k_D$
*5:Recycling Leadership Council (RLC)
https://urldefense.com/v3/__https://www.recyclingleadershipcouncil.org/news/introduction-of-the-recycled-materials-attribution-act__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRsuc9J93$
*6:Plastics Today (業界ニュース)
https://urldefense.com/v3/__https://www.plasticstoday.com/legislation-regulations/bipartisan-bill-seeks-clear-standards-for-recycled-content-marketing__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRq9CqDD0$
*7:HB1953 Bill Text Enrolled
https://urldefense.com/v3/__https://capitol.texas.gov/BillLookup/History.aspx?LegSess=86R&Bill=HB1953__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRgO28pCE$
*8:HB 3060 Bill Text Enrolled
https://urldefense.com/v3/__https://capitol.texas.gov/BillLookup/Text.aspx?LegSess=88R&Bill=HB3060__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRgq3zkTb$
*9:TCEQ - Advanced Recycling:
https://urldefense.com/v3/__https://www.tceq.texas.gov/p2/recycle/advanced-recycling-identifying-recycled-material-recycled-plastics__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRsTWJX3t$
*10:SB 54 法規制ポータル
https://urldefense.com/v3/__https://calrecycle.ca.gov/laws/rulemaking/sb54regulations/__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRoGerJco$
*11:経済産業省:プラスチック資源循環におけるマスバランス方式の社会実装に向
けた論点整理
https://urldefense.com/v3/__https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/plastic_shigen/pdf/20240329_1.pdf__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRheG-PUQ$
*12:SUP指令
https://urldefense.com/v3/__https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2019/904/oj__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRm6ByEgC$
*13:SUP実施規則案
https://urldefense.com/v3/__https://ec.europa.eu/transparency/comitology-register/screen/documents/113092/1__;!!IbyhvWje29DZ!u8E-BRqOmRDpuyBYXMUyk0hCrFZ7LpZP4qDP-XgNcsnF179WBZpyc5PLWlbI_RAspUn3uFi2qvC0eCLghhwrjxxLCsWeRndZgsGK$
(一社)
東京環境経営研究所 松浦 徹也
(2026年4月)