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EU 次期排出ガス規制の動向

【1.EU 次期排出ガス規制の動向】
1.背景
欧州委員会(European Commission:EC)は、欧州の次期自動車環境規制(Regulation on type-approval of motor vehicles and engines and of systems, components and separate technical units intended for such vehicles, with respect to their emissions and battery durability:Euro 7)(俗称:次期排出ガス規制)案を2022年11月10日に提出しています。(1)
その後、欧州議会と欧州理事会で審議されて、2023年12月18日にようやく暫定的な政治合意に達したとの発表がありました。(2)(3)
ここで「ようやく」と記したのは、本案の最初の正式提出までに自動車業界から本案作成を担ったコンソーシアム(Commission consortium of consultants tasked to work on Euro7:CLOVE)に対して何度も内容が厳しすぎるとの反発に遭い(4)、正式提出が延期された経緯があるからです。
Euro7は日本では次期排ガス規制と呼ばれることが多いですが、正式タイトルが示すように単なる排出ガスの規制に留まらず、電気自動車を含む自動車全般を対象とした運輸手段のもたらす環境負荷全体をカバーしようとする規制です。

2.次期排出ガス規制(案)(Euro7)とは
Euro7は、現在の乗用車とバンを規制するEuro6と貨物車とバスを規制するEuroVIを統合し、電気自動車を含むあらゆる種類の車両を一元的に対象とした後継規制と位置づけられています。
規制内容は、従来からの排出ガス規制に加えて、ブレーキとタイヤからの微粒子排出物規制、車両の耐久性規制、搭載バッテリーの耐久性規制、及び車両の排出量モニターの導入が新たに提案されています。
現時点で合意された各規制内容について以下に簡単に説明します。

2.1 排出ガス規制
排出ガスの試験方法に関しては、現行の試験方法を継承し、路上走行試験の採用は見送られました。
粒子状物質粒子数規制(6×1011/km)はEuro6と同じ数値ですが、検出粒子径がEuro6の23nm以上から10nm以上と厳しくなっています。また、ガソリン車の燃料蒸発量上限も1.5g/testに引き下げられています。
乗用車とバンに関しては、新たに亜酸化窒素(N2O)とアンモニア(NH3)を、貨物車とバスに関しても、従来のNH3に加えてN2Oの規制が導入されています。

2.2 ブレーキ時の粒子状物質排出規制
ブレーキ時のブレーキブレードとタイヤの摩耗からの微粒子排出物規制が新たに導入されました。
乗用車とバンに関しては、純粋電気自動車(EV)で3mg/km以下、その他は7mg/km以下と規定されています。
貨物車とバスに関しては、EVで5mg/km以下、その他は11mg/km以下です。


2.3 バッテリーの耐久性規制
新たにEV及びハイブリッド車(HEV)搭載バッテリーの耐久性規制が導入されました。
新車から5年又は走行距離10万km時点で、初期の満充電容量に対して、乗用車は80%以上、バンは75%以上です。8年後又は16万km時点では,各々72%以上、67%以上となっています。
貨物車とバスに関する規制は設けられていません。

2.4 寿命要件
すべての車両に対してより厳格な寿命要件を導入しました。上記規制値は、この寿命要件内で保証しなければなりません。
乗用車とバン:最長で8年又は16万kmのどちらか短い期間
       一部規制は、最長10年又は20万kmのどちらか短い期間
貨物車とバス:・16トン以下の貨物車及び7.5トン以下のバスは、
        最長で8年又は30万kmのどちらか短い期間
        一部規制は、最長10年又は37.5万kmのどちらか短い期間
・16トン以上の貨物車及び7.5トン以上のバスは、
        最長で12年又は70万kmのどちらか短い期間
        一部規制は、最長15年又は87.5万kmのどちらか短い期間
2.5 車両の排出量モニター導入
排気ガス等を検知するシステム(On-board diagnostics:OBD)と監視システム(On-board monitoring:OBM)、及び燃料・電力消費量監視システム(On-board fuel & electric consumption monitoring:OBFCM)の設置が義務となります。
このシステムで収集したデータは、車両のユーザーに提供されて修理の必要性を知らせると共に、外部との通信機能を装備して定期検査や路上検査に用いられることが求められています。

3.まとめ
Euro7は、2035年までに「全ての新車をゼロエミッション化」するために提案されたもので、当初案では意欲的な規制が盛り込まれていましたが、合意案はかなり緩和されたものになりました。しかしながら、新たにブレーキ時の粒子状物質排出規制やバッテリーの耐久性などが盛り込まれたことは大きな前進と考えられます。
今後は、欧州理事会と欧州議会で承認されて正式に採用され公示される予定です。今回の合意の中で適用開始時期は、新型式認証の乗用車とバンは発効から30カ月後、貨物車、バス及び大型トレーラーは48カ月後となります。なお、旧型式認証の乗用車とバンは、42カ月後に型式認証が無効となり販売等ができなくなります。旧型式認証の貨物車、バス及びトレーラーは60カ月後に無効となります。
引用先
(1)Euro7(当初案)プレスリリース
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_6495
(2)暫定合意プレスリリース
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/12/18/euro-7-council-and-parliament-strike-provisional-deal-on-emissions-limits-for-road-vehicles/
(3) Euro7暫定合意案
https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-16960-2023-REV-1/en/pdf
(4) 欧州自動車工業会の政策提言(2023年2月)
https://www.acea.auto/publication/position-papers-proposal-for-a-euro-7-regulation/
(情報提供 (一社)東京環境経営研究所)
 

​(2024年3月)​
 

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