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プラスチック規制の潮流:イタリア国内法のマーキング規制

【1.プラスチック規制の潮流:イタリア国内法のマーキング規制】
欧州委員会は、2020年3月に新循環経済行動計画(new circular economy action plan:CEAP)(*1)を採択しました。CEAPは、製品の全ライフサイクルにおける取り組みを示しています。製品の設計方法、循環型経済プロセスの促進、持続可能な消費の促進を目標として、廃棄物の発生を防止し、使用した資源をできるだけ長くEU経済圏に保持されることを目指しています。
 そこで今回は、CEAPを受けたイタリアのプラスチック規制の現状と、その根幹をなすマーキング規制について取り上げてみます。

1.イタリアの国家戦略
イタリアでは、環境エネルギー安全保障省が2022年6月に「循環経済のための国家戦略」(“STRATEGIA NAZIONALE PER L’ECONOMIA CIRCOLARE)(*2)を立案し、今後の国家戦略の中心としています。
その中で「国家プラスチック戦略(案)」の策定に取り組むとしており、生産と消費プロセスの革新とエコデザイン、廃棄物生成防止ツール、回収の仕組みの開発、リサイクル目標の算出等の戦略的目標を定めることや、循環型サプライチェーンを支援するための拡大生産者責任、税制、インセンティブ等の金融・非金融手段を開発する、などの要件を提示しています。
なお、目標値としては、プラスチック廃棄物のリサイクル率は65%(メカニカルリサイクル、ケミカルリサイクル)とされています。また、イタリアの「国家復興レジリエンス計画(PNRR)」(*3)では、海中のプラスチック廃棄物の量を半減させ、2030年までに環境中に放出されるマイクロプラスチックの量を30%削減することを理想としています。

2.プラスチック製品のマーキング規制
EUのSUP(Single-Use Plastic)指令(特定のプラスチック製品の環境への影響の低減指令 (EU) 2019/904)(*4)は、第8条で対象となる使い捨てプラスチック製品であって、EU市場に出回るものに対し、拡大生産者責任制度が課されることを規定しています。また、第7条で対象となる使い捨てプラスチック製品について、消費者に製品中にプラスチックが含まれていることを伝達し、その環境への影響を考慮して廃棄時の注意を喚起することを目的に、その包装又は製品自体に、目立ってはっきりと読み取れ、かつ消えない表示を付す義務が規定されています。
SUP指令を受けたイタリア国内法である2021年11月8日付政令第196号(*5)は重要です。この政令は、特定の使い捨てプラスチック製品の販売禁止と制限を規定することに加え、消費の削減や、新たな拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)制度の設立など、EPRの原則の完全実施に向けた道筋を示しています。この責任の一部でマーキングの要件として、上市される使い捨てプラスチック製品は、2020年12月17日の規則 (EU) 2020/2151(*6)に従い、包装上又は製品自体に、大きく、はっきりと読みやすく、消えない文字で表示されなければならない、とされています。また、生産者は製品の重量に対するプラスチック部品の重量に比例した金額で、啓発措置の費用や公共回収システムに納入される製品の廃棄物回収にかかる費用などの負担を求められています。

3.まとめ
前記の「国家プラスチック戦略(案)」が策定されると、それを受けて様々なプラスチック規制が法制化されることが予想され、今後の動向に注意が必要です。
また、前記のイタリア政令第196号は、プラスチックの製造から使用、リユース・リサイクルまで一貫した規制となっており、製造者にライフサイクルを通じた対応の責任(拡大生産者責任)を明文化し、規定に違反して製品を上市または入手可能にした場合は、2,500ユーロから25,000ユーロまでの行政罰が科されるなど厳しいものとなっていますので、日本企業も注意が必要です。

引用先
(*1) Circular Economy Action Plan
https://environment.ec.europa.eu/strategy/circular-economy-action-plan_en
(*2) 循環経済のための国家戦略
https://www.mase.gov.it/sites/default/files/archivio/allegati/PNRR/SEC_21.06.22.pdf
(*3) 国家復興レジリエンス計画(Piano Nazionale di Ripresa e Resilienza:PNRR)
https://www.mef.gov.it/focus/Il-Piano-Nazionale-di-Ripresa-e-Resilienza-PNRR/
(*4) SUP指令 (EU) 2019/904
https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2019/904/oj
(*5) decreto legislativo 8 novembre 2021, n. 196
https://www.gazzettaufficiale.it/eli/gu/2021/11/30/285/so/41/sg/pdf
(*6) 規則 (EU) 2020/2151
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_impl/2020/2151


(一社)東京環境経営研究所)
 

​(2023年10月)

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