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非意図的添加とGMP

1.はじめに
 現在の日常生活において食品の容器や包装材は欠かせないものですが、「食品の安全・安心」への関心が高まっている中、食品の素材そのものやその添加物だけでなく、食品に接触することによる容器や包装材の含有成分の食品への移行にも関心が高まっています。EUでは食品に接触する容器や包装材などを食品接触材料「Food Contact Material:以下、FCM」とし、「食品に接触する材料および成形品に関する規則(EC)No 1935/2004:以下、FCM規則」1)で管理しています。
FCM規則の附属書Ⅰで「特定措置の対象となる材料・成形品群のリスト」として17種類の材料・成形品が示されています。現在のところ、その17種類すべての措置は公示されていませんが、以下の措置は公示されています。
 ・アクティブ/インテリジェント材料および成形品:規則(EC) No 450/2009 2)
 ・セラミック(陶磁器):指令84/500/EEC 3)
 ・再生セルロース:指令2007/42/EC 4)
 ・再生プラスチック材料および成形品:規則(EC) No 282/2008 5)
 ・食品と接触することが意図されるプラスチック材料および成形品について:規則(EU) No 10/2011(以下、PIM) 6)
ここでは特に関心が高いPIMについて解説します。
また、FCM規則の実行を保証するしくみとして、「食品接触材料および成形品の適正製造規準に関する規則(EC)No 2023/2006:以下、GMP規則」7)があります。
以降、これら規則の要求事項の本質を中心に解説します。

2.FCM規則
FCM規則は食品に直接または間接的に接触することを意図したFCMの管理の枠組みを取り決めた規則と言えます。それらのFCMは、人の健康を脅かす、食品の組成に許容できない変化をもたらす、その官能特性(味、臭いなど)の劣化をもたらすなど、大量に食品に移行しないようにするために、十分に不活性でなければならないということです。
消費者にとっては、FCMの影響度を知るために適切なラベル表示が必要です。そこで、適切なラベル表示やその情報は、本規則の食品表示に関する規定に準拠し、FCMの安全で正しい使用を消費者に支援する必要があるとしています。
 また、FCMのトレーサビリティは、サプライチェーンの管理、欠陥品の回収、消費者への情報提供、責任の帰属を明確にするために、サプライチェーン上のすべての段階のサプライヤーで確保されるべきです。事業者は最低限、FCMのサプライヤーを特定できるようにしなければならないとされています。

3.PIM
 PIMはFCMがプラスチックである場合、その含有成分の食品への移行の限度を取り決めた規則と言えます。この中で、FCMに関してEU加盟国内の法律の差異を解消するための一般原則を定めています。2011年4月22日に公示されましたが修正を重ね、直近修正日は2020年9月3日(15版)となっており、その修正動向にも注意が必要です。
 PIMは、以下のような最近のプラスチックFCMの技術動向にも対応しています。
1)純粋にプラスチックで作られた材料や成形品の他に、プラスチックと他の材料と組み合わせたFCM(いわゆる多材料多層材料)。
2)プラスチック材料や成形品は、接着剤によって接着された層で構成されているFCM。
3)有機又は無機のコーティング材で印刷又は表面塗装されているFCM。
 具体的には附属書に「ユニオンリスト(FCMとして、意図的に使用することができる認可物質リスト)」としてポジティブリスト形式で示されています。
プラスチック材料や成形品の製造及び使用中に、反応及び分解生成物が形成されることがあります。しかし、これらの形成されたすべての物質を本規則で規制することは不可能です。したがって、その事業者の最終品としてのプラスチック材料や成形品中に含まれる潜在的な健康リスクは、リスク評価に関する国際的に認められた科学的原則に従って、事業者によって評価されなければならないとしています。
 なお、以下の物質のリスク評価と使用に関して、EU レベルではまだ規則が定められておらず、その使用はEU加盟国の国内法に従うとされています。
1)プラスチックに含まれる着色剤
2)プラスチックの製造における溶媒

4.GMP規則
 GMP規則は、FCMの製造に関して、その適合性を確保するために事業者に課した適正製造規準(good manufacturing practice:GMP)と言えます。一般規則として「品質保証システム」、「品質管理システム」、「文書化」を規定しています。また附属書に詳細規則を規定しています。産業界には、GMPを規定している業界と、そうでない業界があると考えられ、EU加盟国内の統一性を確保することが必要です。したがって、GMP規則で事業者に一定の義務を課してその適合性を確保しています。全ての事業者は、サプライチェーンにおける自社の位置に応じて、効果的な品質管理を行う必要があります。しかし、小規模事業者に過度の負担がかからないよう、比例的に適用されるべきであるとしています。
なお、詳細規則については現在のところ、印刷インキを含む工程についてのみ規定しています。「必要に応じて他の工程のために確立されるべきである。」とされており、今後の改正動向に注意が必要です。FCMとなる印刷インキについては、食品に移行しないことを保証しなければなりません。
食品の容器や梱包材の安全性を確保するための規格・標準類に、ISO22000、FSSC22000(Food Safety System Certification 22000)、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)などがあります。HACCPは食品の衛生管理手法の国際標準です。GMPは前述のように、FCMの製造に関してその適合性を確保するために事業者に課した適正製造規準と言えます。ISO22000は、ISO9001をベースにHACCPとGMPなどを組み合わせた食品安全マネジメントシステムの国際標準規格です。FSSC22000はISO22000にさらに追加要求事項などを加えた食品安全の認証枠組みの一つです。これらに対し、GMP規則はEU加盟国の法令を統一するために制定された法令であり、法的な強制力があります。

5.おわりに
 FCM規則では、FCMの本規則への適合は、開発途上国の特別なニーズを考慮することが適切であるとしています。欧州委員会は、「飼料・食品法、動物の健康及び動物福祉の規則への遵守の検証するために行う公的管理に関する規則(EC)No 882/2004 8)」により、FCMの安全性を含む食品安全に関して、開発途上国を支援しています。そのためFCM規則では開発途上国に対して、FCMに関する管理も支援するという、特別な規定を設けています。

(情報提供 (一社)東京環境経営研究所)

本解説は、筆者の執筆時点での見識に基づく、原典の機械翻訳による部分的意訳で、公的機関等の見解ではありません。あくまで規制対応の参考意見としてご利用いただき、原典により最終的な判断は読者ご自身で行っていただきますよう、お願いいたします。
本解説に基づき、直接的または間接的に利用者および第三者に発生する可能性がある損害に関しましては、免責とさせていただきます。

引用先    
1)    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02004R1935-20210327
2)    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32009R0450
3)    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=celex%3A31984L0500
4)    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32007L0042
5)    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX:32008R0282

 

​(2023年1月)​
 

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