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EUのプラスチック戦略

【1.EUのプラスチック戦略】
1.EUの廃棄物戦略
 EUの環境戦略は世界に大きな影響を与えています。ことに、EUの環境戦略のアクションプランの「新循環型経済行動計画」(*1)による以下の4重点項目が新たな法規制を生み出し、EU域外国にも影響を与えています。
(1)持続可能な製品をEUの規範とする
 製品の長寿命化やリサイクル材を使用など
(2)消費者の権利強化
 環境配慮製品の選択権や修理権など
(3)資源集約型産業循環型モデルへの移行
 過剰包装の削減や再生材料の含有量規定など
(4)ごみ削減
 ごみ分別とラベリングのEU共通化など

 

2.廃棄物の状況
 EU議会の決議「EUのプラスチック戦略(A European Strategy for Plastics in a circular economy:C 433/136)」(2019年12月23日)(*2)で、プラスチック廃棄物の状況と対応の方向性を示しています。
・EUでは、毎年2,580万トンのプラスチック廃棄物が発生している。
・EUでは、プラスチック廃棄物の30%のみがリサイクルのために収集されている。一方、市場に出回っているプラスチックの6%だけが再生プラスチックから作られている。
これらに状況を踏まえて、EU委員会に新たな取り組みを起案しています。
・「費用対効果の高い方法で再利用可能でリサイクル可能なプラスチック包装」について、過剰包装を含めて、明確で実施可能で効果的な要件を新たにすることを求める。
・包装以外のプラスチック製品についても、リサイクル材料、製品、およびシステムが果たす重要な役割を含めた資源効率と循環性の包括的な原則を作成するように求める。
・製品基準の開発、ライフサイクルアセスメント、すべての主要プラスチック製品グループをカバーするようにエコデザイン法的枠組みの拡大、エコラベル規定の採用、および製品環境フットプリント法を実施することは、拡張生産者責任によって達成され得ると考える。
 このEU議会の決議が、ELV指令((EC)2000/53)、廃電池指令((EC)2006/66)、WEEE指令((EU)2012/19)、WFD((EC)2008/98)、包装材指令((EC)94/62)、ErP(エコデザイン指令)((EC)2009/125)などの改正の方向性を与えています。

 

3.包装材指令((EC)94/62)の改正
2包装材指令は、(EU)2018/852(*3)により修正されました。
前文で「より多くのアルミニウムがリサイクルされ、エネルギーの大幅な節約およびCO2排出の削減につながるので、経済的および環境的利益を達成するために、鉄およびアルミニウムについて別個のリサイクル目標を設定すべきである。」と新たなリサイクル対象が示されました。
この前文の理念を受けて、以下の目標が設定されました。
・2030年12月31日までに、すべての包装廃棄物の重量70%以上をリサイクルする。
・2030年12月31日までに、包装廃棄物に含まれる以下の特定の材料に関して、リサイクルのための重量別以下の最低目標を達成する。
(i)プラスチック:55%
(ii)木材:30%
(iii)鉄:80%
(iv)アルミニウム:60%
(v)ガラス:75%
(vi)紙と段ボール:85%

 また、生分解性包装廃棄物は、最終的にCO2、バイオマスおよび水に分解するような物理的、化学的、熱的または生物学的分解を受けることができるような性質のものでなければならないとし、オキソ分解性プラスチックは対象外となりました。この流れのなかで、リサイクルされていない各加盟国で発生するプラスチック包装廃棄物のCall-Rateを均一で0.80ユーロ/kgとする決定(*4)を行いました。

 

4.使い捨てプラスチック(single-use plastic)指令
「特定のプラスチック製品の環境への影響の低減指令((EU) 2019/904)」(*5)が2019年7月2日に施行されました。
前文で、「廃棄物発生量の削減を第一にして、使い捨て製品(SUP)から持続可能で毒性のない再使用可能な製品および再使用システムを優先する循環アプローチを促進する。」と理念を示しています。
具体的な義務として、第8条(拡大生産者責任)で「指令2008/98/EC(WFD)の第8条及び第8a条に従って、全ての使い捨てプラスチック製品について、拡張生産者責任スキームが確立されることを確実にしなければならない。」としています。
 これにより、フランスでは2022年1月1日から、家庭向け包装材、電気電子製品や繊維製品等について、分別回収を徹底するために“Triman Logo”が強制化されました。

「新循環型経済行動計画」は、EU域内だけでなく、韓国の「資源の節約とリサイクル促進に関する法律」(*6)や日本のプラスチック資源循環法(令和3年法律第60号)( *7)にも影響を与えています。

 

引用先
*1:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1583933814386&uri=COM:2020:98:FIN
*2:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:C:2019:433:FULL
*3:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32018L0852
*4:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32020D2053&qid=1609775612824
*5:https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2019/904/oj
*6:https://www.law.go.kr/LSW/lsStmdInfoP.do?lsiSeq=228127&ancYnChk=0
*7:https://plastic-circulation.env.go.jp/wp-content/themes/plastic/assets/pdf/houritsujoubun_001.pdf
 

​(2022年6月)

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