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プラスチック規制の潮流

【1.プラスチック規制の潮流】後半
EPRは、ある意味では、行政負担が軽減されますので、規制の動機付けとなり、「持続可能な開発」「2050年カーボンニュートラル」が政策のキーワードになり、規制法の基本理念として再び注目を浴びてきています。
この潮流を背景とした規制法を紹介します。

2.日本
(1)循環型社会形成推進基本法(*5)
EPRについて、事業者の責務として定めて、「発生抑制」(リデュース)、「再使用」(リユース)、「再生利用」(マテリアルリサイクル)、「熱回収」(サーマルリサイクル)、「適正処分」の順に処理の優先順位を明確にしています。

(2) 家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)(*6)
 家庭用エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機の家電4品目について、消費者に家電廃棄時の費用負担を義務付けて、小売業者による引き取りおよび製造業者などによるリサイクルを義務付けました。

(3)容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)(*7)
 地方自治体(市町村)の責任で実施していた容器包装廃棄物の処理を、消費者は分別廃棄し、市町村が分別収集し、事業者(容器の製造事業者・容器包装を用いて中身の商品を販売する事業者)が再商品化(リサイクル)する役割分担が決められました。

(4)新プラ法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)(*8)
目的は、プラスチックの資源循環の促進等を図るために、プラスチック使用製品の使用の合理化、プラスチック使用製品の廃棄物の市町村による再商品化並びに事業者による自主回収及び再資源化を促進するための制度の創設等です。

3.EU
2019年にライエンEU委員長は就任にあたり「EUグリーンディールの8つの要素(総合的な戦略)」(*9)を示し、新循環型経済行動計画(アクションプラン)(*10)を策定しました。
 アクションプランでは、主要な製品バリューチェーンについての取り組みが示されています。
(1)包装
2030年までに経済的に無理なくEU市場に上市されるすべての包装が経済的に妥当な方法で再利用・リサイクル可能になることを目標に設定。
数値目標の設定などによる(過剰)包装と包装廃棄物の抑制、特定用途での一部梱包材料の使用制限などによる再利用・リサイクル促進、使用可能な素材の制限などを検討する。
(2)プラスチック
2018年に策定されたEUプラスチック戦略に基づき、欧州委はリサイクル・プラスチックの使用拡大に向けて、包装や建設資材、自動車などの分野で、リサイクル材の含有量に関する必須要件を提案する。

4.フランス
 EU加盟国は、WFDなどのEU指令を国内法化します。EPRは、環境法典L.541-10-1(*11)で、拡大生産者責任の原則の適用対象を包装、印刷された紙など22品目に特定しています。22品目は廃棄物の防止及び管理を提供又はこれに貢献し、並びに製品にエコデザインアプローチを採用することを要求する

EPRの原則の適用は、廃棄物を発生させる製品又はその製造に使用される要素及び材料を開発、製造、取扱い、処理、販売又は輸入する自然人又は法人は、そこから生じる廃棄物の防止及び管理を提供又はこれに貢献し、並びに製品にエコデザインアプローチを採用することを要求されます。
 従って、22品目は「廃棄物の防止及び管理を提供又はこれに貢献」が義務となります。
 WFDは、一般廃棄物と有害廃棄物の混合が禁止しています。包装材や紙の印刷インクに有害物質を含有していると、リサイクルを阻害するので、印刷インクに有害物質であるミネラルオイル(鉱物油)の使用を大臣命令(*12)で禁止しました。

 なお、印刷インクへのミネラルオイル使用制限は、RoHS指令などの製品への特定有害物質の含有制限とは趣の異なる部分があります。包装材の包装材の要件(設計基準)が、環境法典R.543-49(*13)に規定されており、設計要件としてミネラルオイルフリーが重金属フリーとともに要求されています。

 許容されるという意味ではありませんが、輸送用段ボールにマーカーペンでマークするなどを規制することを意図していません。

 イタリアでも「法律 2021 年 12 月 30 日、n. 228」(*14)で、分別回収の新たな仕組みとして規格UNI 11686による色表示と分別回収ルール(*15)が2023年1月1日から始まっています。

5.アメリカ
 アメリカでは、拡大生産者責任(EPR)は、製品の寿命に対する生産者の責任を割り当てる政策アプローチとして、2022年で10州が包装材のEPRを導入し、4州が法案を採択しました。(*16)
現状は州による差異はありますが、“The Toxics in Packaging Clearinghouse (TPCH)”(*17)による共通州法“Model Toxics in Packaging Legislation”(*18)などで共通化が期待されています。

 先人の「成長の限界」「持続可能な開発」の警告を受けて、最近はSDGsを拠り所として世界各国が新たな規制を開始しています。各国の規制は違いが見えますが、ルーツは同じであり、人類共通のゴールに向けて走っている途中の差異とみるべきと思います。

 
(情報提供 (一社)東京環境経営研究所)

本解説は、筆者の執筆時点での見識に基づく、原典の機械翻訳による部分的意訳で、公的機関等の見解ではありません。あくまで規制対応の参考意見としてご利用いただき、原典により最終的な判断は読者ご自身で行っていただきますよう、お願いいたします。
本解説に基づき、直接的または間接的に利用者および第三者に発生する可能性がある損害に関しましては、免責とさせていただきます。

引用先
*5:循環型社会形成推進基本法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000110_20150801_000000000000000
*6:家電リサイクル法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410AC0000000097
*7:容器包装リサイクル法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=407AC0000000112
*8:新プラ法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=503AC0000000060&keyword=%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF
*9:EUグリーンディール
https://ec.europa.eu/environment/pdf/chemicals/2020/10/Strategy.pdf
*10:新循環型経済行動計画
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1583933814386&uri=COM:2020:98:FIN
*11:環境法典L.541-10-1
https://www.legifrance.gouv.fr/codes/section_lc/LEGITEXT000006074220/LEGISCTA000041554940/#LEGISCTA000041554945
*12:ミネラルオイル(鉱物油)の使用禁止の大臣命令
https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000045733481
*13:環境法典R.543-49
https://www.legifrance.gouv.fr/codes/section_lc/LEGITEXT000006074220/LEGISCTA000006159433/#LEGISCTA000006159433
*14:n.228
https://www.gazzettaufficiale.it/eli/id/2021/12/30/21G00255/sg
*15:分別回収ルール
http://www.progettarericiclo.com/en/docs/environmental-labeling-packaging
https://www.etichetta-conai.com/documenti/linee-guida-per-una-etichettatura-ambientale-volontaria/
*16:州法制定状況
https://epr.sustainablepackaging.org/policies
*17:The Toxics in Packaging Clearinghouse (TPCH)
https://toxicsinpackaging.org/the-clearinghouse/
*18:共通州法“Model Toxics in Packaging Legislation”
https://toxicsinpackaging.org/model-legislation/model/


(一社)東京環境経営研究所)
 

​(2023年4月)

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