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「1つの物質、1つの評価」(‘one substance, one assessment’ OSOA)化学物質評価改革と関連政策

 

§1 EUの2050年目標について
 2024年12月1日にEUでは “Ursula Gertrud von der Leyen 2”が始まり2029年までの政策が次々と展開されています。
 EUの政策は“Backcasting”的(注1)に展開されますので、政策のつながりを理解しておくことが必要です。EUは政策展開を説明する文書が数多く公布されており、政策や法規制の関連性を把握するのは難しく感じます。
 第1期の2019年に定めたEUグリーンディールの2050年の目標に向けての具体化を、Leyen 2は次々と政策(Policy)、施策や法令((Measure, Action, Initiative)を公布しています。
EUが2050年までに気候中立な経済を達成し、経済成長と資源利用を切り離すことを目指す、包括的な成長戦略で、その主な目標は以下の3点です。
(i)2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ
EU全体で温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすることを目指す。これは、地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定の目標達成に貢献する。
(ii)経済成長と資源利用の分離(デカップリング)
経済成長を維持しながら、天然資源の利用を減らし、環境への負荷を低減することを目指す。循環型経済への移行を通じて、製品のライフサイクル全体で資源を効率的に利用し、廃棄物の発生を抑制する。
(iii)公正な移行
気候変動対策への移行は、社会のあらゆる層に影響を与えるため、どの地域や人々も取り残さない公正な移行を目指す。特に、化石燃料産業に依存してきた地域や、経済的な影響を受けやすい人々への支援策を講じる。

§2 EUグリーンディールについて
2050年目標を達成するために、EUグリーンディール(*1)は、エネルギー、産業、運輸、農業、建築、生物多様性など、幅広い分野にわたる具体的な政策と行動計画を策定・実施しています。
EUグリーンディールは、農業、産業、サービス、エネルギー、金融、運輸、建設などの経済のあらゆる部分に影響を与えるように設計されています。新たなビジネスチャンスを生み出し、イノベーションを推進し、誰一人取り残さない公正な移行を確保することを目的としています。
EUグリーンディールは以下の項目で構成されています。
(1)包括的な目標
(i)2050年までに気候中立を実現する。
(ii)経済成長と資源利用を切り離す(デカップリング) 
(iii)「ゼロ汚染」(大気、水、土壌の汚染、およびプラスチック廃棄物を大幅に削減し、無毒な環境)
(2)イニシアチブ
(i)クリーンエネルギー
(ii)循環型経済
(iii)効率的な改修 
(iv)持続可能なモビリティ
(v)Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略
(vi)生物多様性: 生物多様性と生態系を保護・回復します。

§3 化学物質戦略について
グリーンディールの「ゼロ汚染」という目標を達成するための具体的な政策手段として、2020年10月14日に「持続可能のための化学物質戦略-有害物質のない環境を目指して “ Chemicals Strategy for Sustainability Towards a Toxic-Free Environment”」(*2)を発表しました。
この化学物質戦略は、EUにおける化学物質の管理を、より安全、持続可能、かつ環境と人間の健康に配慮したものへと変革するための包括的なビジョンと具体的な行動を示すもので、イノベーションの推進、規制の強化と簡素化、知識ベースの拡充、そしてグローバルなリーダーシップの発揮を通じて、無毒な環境を実現することを目指しています。

化学物質戦略の要旨は以下です。
1. グリーンおよびデジタル遷移のための持続可能な化学物質
化学物質は日常生活や経済活動に不可欠である一方、有害な化学物質は人間の健康と環境に悪影響を及ぼす可能性がある。
安全で持続可能な化学物質への移行は、グリーンおよびデジタル遷移を支援し、EUの回復に不可欠である。
EUはすでに包括的な化学物質規制の枠組みを持つが、より迅速かつ効果的に進化し、有害化学物質の課題に対応する必要がある。
より一貫性があり、予測可能で強力な規制の枠組みは、イノベーションを推進し、保護を強化し、EU化学産業の競争力を高める。
COVID-19パンデミックは、サプライチェーンの脆弱性と、重要な化学物質の持続可能な調達の多様化の必要性を浮き彫りにした。
EU委員会は、利害関係者との対話を通じて戦略の目的を実現するため、高水準ラウンドテーブルを設立する。

2. 無毒環境に向けて: 新しい長期ビジョン
化学物質戦略は、化学物質が社会への貢献を最大化し、地球と将来の世代への有害性を回避する方法で製造・使用される、無毒な環境を目指す長期的な展望を示す。
安全で持続可能な化学物質の生産と使用において、EU産業を世界的に競争力のあるプレーヤーと位置づける。
安全で持続可能な製品と生産方法への投資を誘引するための明確なロードマップとタイムラインを提案する。
戦略は、安全で持続可能な化学品のイノベーション支援、人の健康と環境保護の強化、法的枠組みの単純化と強化、証拠に基づく政策決定の支援、グローバルな健全管理の模範となる行動を通じて、このビジョンの実施に向けた道筋を示す。

2.1. 安全で持続可能なEU化学物質の革新
安全かつ持続可能な化学物質への移行は、社会的緊急性であり、経済的機会であり、EUの回復の重要な要素である。
安全で持続可能な設計の化学物質の推進、安全な製品と無害な物質循環の達成、化学物質製造のグリーン化とデジタル化、EUの開放的な戦略的自律性の強化が重要である。

2.2. 緊急の環境および健康上の懸念に対処するためのより強固なEUの法的枠組み
最も有害な化学物質から消費者、脆弱な基、労働者を保護するために、リスク管理の一般的なアプローチを拡大する。
ヒトおよび環境の内分泌かく乱化学物質への曝露に特別な注意を払い、予防的な包括的手法を採用する。
化学物質の複合効果から人と環境を守るために、法的要件を一貫して整備する。
環境中の化学汚染ゼロに向けて、特にPFASへの包括的な対策を講じる。

2.3. 法的枠組みの簡素化・統合
評価手順をより単純かつ透明性のあるものにし、OSOAのアプローチを推進する。
規制結果の一貫性を達成し、化学物質データへのアクセス可能性と相互運用性を改善する。
不適合に対するゼロ許容アプローチをとり、化学物質法の実施と施行を強化する。

2.4. 化学物質を基礎とした総合的な知識
化学物質データの入手可能性を改善し、上市されたすべての物質とその環境フットプリントに関する包括的な情報ベースを構築する。
強化された化学科学-政策インターフェースを構築し、研究・バイオモニタリングを育成し、動物試験への依存を減らすためのイノベーションを推進する。

2.5. 化学物質のグローバルな健全管理のための例の設定
国際基準を強化し、国際化学物質管理のための新たな戦略的アプローチを推進する。
EU域外での安全性・持続可能性基準を推進し、国際協力と協調を強化する。
EUの知識ベースを共有し、開発途上国を支援する。

§4 OSOAの目標について
 化学物質戦略のOSOAの目標は以下のように示されています。

化学物質の評価手続きの複雑性は、当局および関係者にとって特有の課題である。これは、不整合、手続きの遅延、資源の非効率な利用、および不必要な負担につながる可能性がある。
 EU委員会は、すべての関係者の負担を軽減し、意思決定をより迅速、一貫性があり、予測可能にするために、これらの評価プロセスをより簡素化し、透明性を高めるよう努める。このプロセスはまた、化学物質を個別に評価および規制することから、グループごとに規制することへの段階的な移行を支援するものである。
 化学物質の安全性評価は、様々な法令に基づき、様々な主体によって、異なる時点で行われており、様々なEU機関、科学委員会、専門家グループ、または欧州委員会の部局によって実施されている。関係者および一般市民は、規制プロセスおよびその結果としての決定を把握するのに苦労している。

OSOAは、安全性評価の開始および優先順位付けが、各セクターの特殊性を考慮しつつ、調整され、透明性があり、可能な限り同期された方法で行われることを保証するものである。
ある法令に基づいて評価が提案された場合、他の法令に基づく計画が十分に考慮され、調整された行動が確保されなければならない。これは、REACH規則およびCLP規則の下で既に存在するメカニズムである「公共活動調整ツール(PACT: Public Activities Coordination Tool)」の成功に基づいて行うのが最も効率的であろう。
作業の重複を避けるためには、問題定義に関する早期の合意が鍵となり、構造的または機能的な類似性を持つ物質のグループによる評価が推奨される。利用可能な資源と専門知識の活用は、責任の明確な配分とすべての関係者間の良好な協力によって最適化されなければならない。

EU委員会は化学物質関連法規全体にわたる措置の調整および簡素化を行う。

・単一の「公共活動調整ツール」を使用し、法規全体にわたる当局による化学物質に関する計画中および進行中のすべてのイニシアチブの最新の概要を提供する。
・加盟国、EU委員会事務局、およびEU機関の専門家ワーキンググループを設立し、関連セクターの特殊性も考慮しつつ、化学物質関連法規全体にわたる化学物質のハザード/リスク評価に関するイニシアチブについて議論する。
・EU委員会内に調整メカニズムを確立し、ハザードの特定/分類およびリスク評価に関する化学物質関連法規全体にわたる措置について可能な限り合意および同期を図り、OSOAに向けたプロセスを監督する。
・関連法規に基づいて実施される化学物質に関する技術的および科学的作業を、健康・環境・新たなリスクに関する科学委員会(The Scientific Committee on Health, Environmental and Emerging Risks :SCHEER)および消費者安全に関する科学委員会(Scientific Committee on Consumer Safety :SCCS)の作業を含め、EU機関に再配分することを提案することにより、専門知識および資源の利用を合理化する。
・ECHAのガバナンスを強化し、その資金調達モデルの持続可能性を高める提案を行う。
・REACH規則の認可および制限プロセスを、その実務的な実施からの主要な知見に基づいて改革する。

これらの規制上の成果の一貫性を達成するためには、EUの化学物質関連法規は、特に化学物質(例:ナノマテリアル)の定義に関して、一貫した用語を使用する必要がある。政策評価はまた、関係者が利用可能な情報を常に認識しているとは限らず、再利用の権利が時には過度に制限的であることを示している。さらに、化学データの相互運用性およびアクセシビリティにおけるいくつかの欠点も浮き彫りにしている。加えて、規制上の安全性評価では様々な方法論が用いられており、その結果、非一貫性な成果につながる可能性があり、一方で学術研究は十分に活用されていない。評価の開始および実施、ならびにデータ利用に関しても、異なる透明性規則が適用されている。

OSOAアプローチは、方法論をより一貫性のあるものにし、可能な限り調和させることを目指すものである。これは、データが原則として容易に発見可能で、相互運用可能で、安全で、共有され、再利用されるべきであるという原則に従い、技術的または管理的障害のないデータアクセスを目指す。データは、相互運用性を確保するために、適切な形式およびツール(すなわち、IUCLIDおよびIPCHEM(注2))で利用可能になる。「
OSOAはまた、EUの化学物質に関する意思決定プロセスの科学的根拠に対する信頼性を高める。これは、EUの食品安全分野における透明性に関して取られた重要な措置に基づいている。

§5  迅速で簡素化された透明性の高いプロセスのためのOSOA化学物質評価改革について
2023年12月7日にEU委員会は、以下の3つの立法提案を採択しました。
(i)化学物質に関する共通データプラットフォームを設立する規則案
(ii)化学物質分野における連合機関間の科学的および技術的業務の再配分および協力の改善に関する規則案
(iii)ECHAへの科学的および技術的業務の再配分に関する指令案
 
これらの提案は、以下を目指しています。
欧州化学物質庁(ECHA)、欧州食品安全機関(EFSA)、欧州環境庁(EEA)、および欧州医薬品庁(EMA)における化学物質に関する科学的および技術的作業の協力を強化し、統合する。
これらの機関は、化学物質の評価に使用される優先順位付け、タイムライン、プロセス、および方法論をより適切に調整できるようになります。さらに、ある法令(例えば、殺生物性製品に関するもの)に基づく評価から得られた知識は、別の法令(例えば、玩具に関するもの)に再利用することができます。
共通データプラットフォームを設立し、EU機関およびEU委員会がEU法の下で収集した化学物質に関するデータへの「ワンストップショップ」アクセスを導入する
これには、ハザード、物理化学的特性、環境中の存在、排出量、用途、化学物質の環境持続可能性、および進行中の規制プロセスに関するデータが含まれます。
共通データプラットフォームは、化学物質モニタリング情報プラットフォーム(IPCHEM)(注3)、公共活動調整ツール(PACT)、およびEU化学物質法検索ツール(EUCLEF)(注4)などの既存のプラットフォームを統合します。その範囲をほぼすべてのEU化学物質法に拡大し、ヒトおよび環境に基づく参照値のリポジトリなどの新しいツールおよびデータベースで補完します。

EUで生成されたヒトバイオモニタリングデータの体系的な収集を確立し、人々に発見された化学物質のレベル(例えば、血液または母乳中)について政策立案者に情報を提供すること。これにより、EU市民の化学物質へのばく露レベルをより適切に推定することができます。
汚染が広範囲に及ぶのを防ぐために、例えばPFASなどの化学物質リスクの早期発見を可能にするための監視および展望フレームワークを設定する。
また、迅速な規制対応を可能にし、化学物質に対して取られた規制措置の影響を監視します。このフレームワークは、早期警戒および行動システムと、とりわけ指標のフレームワークで構成されます。
これら3つの提案は、通常の立法手続きの下で、欧州議会および理事会によって審査されます。

 OSOAの狙いは以下となります。
(i)環境と人の健康の保護レベルの向上
より一貫性のある科学的評価: 異なる機関が同じ物質を評価する際に、同じデータと方法論を用いることで、評価結果のばらつきを減らし、より信頼性の高い、質の高い科学的根拠に基づいたリスク評価を可能にします。これにより、有害な化学物質から環境と人の健康をより効果的に保護するための、より適切な規制措置を講じることができます。
早期のリスク特定と対応: 重複した評価を避けることで、新たなリスクがより迅速に特定され、対応策が講じられるようになります。
(ii)規制プロセスの効率化と負担軽減
重複作業の排除: 複数の機関が同じ物質を個別に評価する無駄をなくし、時間、資源、専門知識をより効率的に活用できます。
企業への負担軽減: 企業は、複数の機関に対して異なるデータや情報を提供する必要がなくなり、規制遵守にかかる負担が軽減されます。
(iii)迅速な意思決定
一貫性のある評価に基づいて、より迅速かつ効率的に規制上の意思決定を行うことが可能になります。
(iv)透明性と信頼性の向上
評価結果の信頼性向上: 一つの物質に対して複数の異なる評価が存在する場合に生じる混乱を避け、評価結果に対する信頼性を高めます。
(v)ステークホルダーとのコミュニケーション円滑化: 一貫した評価結果は、政府機関、産業界、市民社会などのステークホルダー間のコミュニケーションを円滑にし、より建設的な対話を促進します。
(v)公衆の信頼向上
透明性の高い、一貫した評価プロセスは、化学物質管理に対する公衆の信頼を高めることに繋がります。

 しかし、OSOA原則で法規制の基準が完全に同じにならないのですが、OSOAは化学物質に関するEU法規制の基準をより同じにするための重要な原則となります。
この原則は、より調和の取れた、効率的で信頼性の高い化学物質管理システムを構築するための重要なステップと言えます。
これは、以下のような要因が依然として存在することによります。
(i)異なる法規制の目的 
REACH、CLP、特定の製品に関する指令など、それぞれの法規制には異なる目的と焦点があり、評価の目的が異なれば、必要な情報や評価の側面も異なる場合があります。
(ii)リスク管理措置の違い 
評価の結果に基づいて取られるリスク管理措置(認可、制限、分類、表示など)は、それぞれの法規制の枠組みの中で決定されるため、同じ評価結果であっても、異なる措置が取られる可能性があります。
(iii)加盟国による実施の違い 
EUの規則や指令は、加盟国がそれぞれの国内法に落とし込んで実施するため、実施方法や執行状況に若干の差異が生じる可能性があります。

§6 共通データプラットフォーム規則について
 2023年12月7日に共通データプラットフォーム規則案(COM(2023) 779 final)(*3)が公開されました。
共通データプラットフォームは、すべての化学物質データへのアクセスを提供することで、対象情報は以下です。
(a)Annex Iに記載されたEU法の実施の一環として生成または提出され、かつ、各省庁または欧州委員会が保有するもの
 70法令が収載されています。
(b) 化学物質分野におけるEU、国内または国際的なプログラムまたは研究活動の一環として作成され、ECHA、EEA、EFSA、EU-OSHAまたは欧州委員会が保有するもの
(c) 附属書IIに記載され、EMA(欧州医薬品庁)が保有するもの

OSOA関連3法案の修正案は2025年4月1日のEU議会で採択(*4)されました。
https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-10-2025-04-01-TOC_EN.html
 EU理事会は2024年6月14日に、EU議会と法案の最終的な形について交渉する準備を整えています。

§7  EU化学物質指標枠組み(EU indicator framework for chemicals)について

EU化学物質指標枠組み(*5)で化学物質の安全性と持続可能性を評価し、その進捗状況を監視するためのツールが検討されています。

このフレームワークは、多岐にわたる指標を含み、化学物質のライフサイクル全体をカバーしている。具体的には、以下の要素に関連する指標が含まれます。
(i)人間の健康と環境への影響: 
有害化学物質へのばく露、環境中の化学物質濃度、健康への影響など。
(ii)化学物質の生産と使用: 
有害化学物質の生産量、使用量、代替物質への転換状況など。
(iii)イノベーションと持続可能性: 
安全で持続可能な化学物質の開発、循環型経済への貢献など。
(iv)規制と管理: 
化学物質規制の実施状況、情報公開の程度など

このため「設計上安全で持続可能(SSbD)による化学物質および材料に関する評価の枠組み(Commission Recommendation (EU) 2022/2510 of 8 December 2022)」(*6)が検討されています。
枠組みの基本目標はグリーンで持続可能な産業転換の促進で、枠組みによりイノベーションのプロセスを誘導し、以下の新しい化学物質や材料が持続可能性を中核として開発されるようにすることを意図しています。
(i)有害物質の最小化
現在および将来の規制要件を超えて、懸念される物質の代替または削減を奨励する。
健康と環境の保護
ライフサイクル全体を通じて、化学物質が人の健康、気候、環境に与える悪影響を最小限に抑えることを目指す。
(ii)総合的な評価
化学物質や素材の安全性と持続可能性を考慮し、調達から使用済みまで包括的に評価する。
(iii)イノベーションの推進力:より安全な代替品の開発を奨励し、材料設計における循環性を促進する。
(iv)ライフサイクルへの配慮
生産、使用、廃棄における化学物質や材料の影響を考慮する。
(v)フレームワークの構造
(再)設計段階と評価段階から構成され、データが入手可能になるにつれて反復的に適用される。
(vi)自主的アプローチ:イノベーション・プロセスを導くための自主的なアプローチである。

§8 今後の政策展開について
 2025年3月25日に欧州委員会は今後の化学産業パッケージに関するハイレベル会合(*7)が開催されました。化学セクターのバリューチェーン全体にわたる主要な関係者を集め、今後策定される化学産業パッケージについて意見交換を行われました。
 テーマは、以下などです。
i) REACH規則の簡素化
ii) EU化学品セクターの競争力強化と持続可能性確保のための施策、
iii) グリーントランジションに向けたEUにおける主要化学物質の入手可能性確保の方法
iv) PFASに関する進行中の作業を含む有害化学物質から人々の健康と環境を守る方法
この成果は、クリーン・インダストリアル・ディール(*8)で発表されているように、2025年後半に採択が予定されている「化学品産業パッケージ」の準備作業に反映されます。

まだまだ、施策展開は続き、徐々に企業対応事項が具体化されてきます。

情報提供 (一社)東京環境経営研究所 松浦 徹也

引用先
*1:EUグリーンディール
https://www.consilium.europa.eu/en/policies/european-green-deal/
*2:化学物質戦略
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:52020DC0667
*3-1:共通データプラットフォーム規則案
https://environment.ec.europa.eu/document/download/92e2c572-02b8-4935-aded-36f85260fa82_en?filename=COM_2023_779_1_EN_ACT_part1_v2.pdf
*3-2:Annex
https://environment.ec.europa.eu/publications/proposal-regulation-establishing-common-data-platform-chemicals_en
*4:EU議会での採択
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/06/14/chemicals-assessment-council-adopts-mandate-for-forthcoming-negotiations-with-the-european-parliament/pdf/
*5:EU化学物質指標枠組み
https://www.eea.europa.eu/en/analysis/publications/eu-indicator-framework-for-chemicals
*6:SSbD
https://eur-lex.europa.eu/eli/reco/2022/2510/oj/eng
*7:今後の化学産業パッケージに関するハイレベル会合
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/mex_25_872
*8:クリーン・インダストリアル・ディール
https://commission.europa.eu/document/download/9db1c5c8-9e82-467b-ab6a-905feeb4b6b0_en?filename=Communication%20-%20Clean%20Industrial%20Deal_en.pdf

注記
注1:未来のあるべき姿や目標をまず明確に設定し、その目標を達成するために、現在から遡ってどのようなステップを踏むべきかを考える思考法
注2:IPCHEM
IPCHEM(Information Platform for Chemical Monitoring:化学物質モニタリング情報プラットフォーム)ツールは、EU委員会が管理するEUで収集・管理されている化学物質の存在に関するデータを検索、アクセス、取得するための共通アクセスポイント
https://ipchem.jrc.ec.europa.eu/#
注3:IPCHEM
化学物質モニタリング情報プラットフォームで、既存のデータ ソースにリンクするプラットフォーム
https://ipchem.jrc.ec.europa.eu/
注4:EUCLEF
EUCLEF(EU Chemicals Legislation Finder) EU化学物質法規制検索ツール
REACH、CLP、BPR、PIC、POPsに関する法規制の概要を提供
https://echa.europa.eu/legislation-finder

 

(2025年6月)
 

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