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特集:SDSの読み方

【SDSの読み方(その1)】

JEMAIのセミナーを受講していただいた方には聞き覚えのあるタイトルだと思いますが(覚えていていただければうれしいのですが)、JEMAIが実施しているセミナーの一部を抜粋してお送りします。はいそうです宣伝です。
 事業所のリスク管理をテーマにした「事業所関連化学物質のリスク管理」というセミナーがあるのですが、おや偶然にも私が講師なのですが、このセミナーの中でSDSの読み方をご紹介しています。
 事業者の皆様は法の対象物質を含む資材を購入する時にサプライヤーさんからSDSを入手して(法的に正確に書くと文字数が増えすぎるので、大まかに書いています)おられますが、SDSに書かれている情報をどう活用していますか?PRTRのデータとして使っている、また安衛法第百一条に従い労働者に周知している、というのが法的に正解ですが、それ以外には現場のリスク管理にどう活用していますか?
 という観点で、セミナーではパワーポイント18枚でご紹介しています。そのエッセンスを連載でお送りします。SDS記載項目は16項目(実質的には15項目)あるので15回分のネタに困らない。という事情もあるのですがそれはそれ。
 なお、特定の化学物質について解説する意図はなく、SDSを現場のリスク管理に生かす考え方の一例を紹介することが目的なので、特定の化学物質/SDSに固定していません。
 SDSの様式は、化管法SDS省令によりJIS Z 7253に適合する努力義務があります。JIS Z 7253:2019ではSDSに記載する16の項目が規定され、それらの項目の番号、項目名及び順序を変更してはならないこととされています。
 それではSDSの情報を現場のリスク管理にどう活用するか、という観点で、項目を一つずつ見ていきましょう。

【SDSの読み方(その2)】
[1 化学品及び会社情報]
 SDSの最初の項目です。ここにはSDSを提供した企業名と化学品の名称などが記載されます。多くのSDSには、化学品の推奨用途や使用上の制限が書かれています。推奨用途や使用上の制限は必須情報ではなく望ましい情報ですが、場合によってはユーザーにとって参考になる情報です。
 1ページ目に作成日と最新改訂日が書かれていますが、これも望ましい項目です。ただし、各ページに最新改訂日を書くことになっているので、事実上必須項目であり、実際ほとんどのSDSには書かれています。
 最新改訂日なんて何の役に立つのかとお思いでしょうが、そのSDSが現在の法に準拠しているかどうかがわかります。SDSは法に準拠した文書なので、法が改正されて記載項目が変わったら、法改正以前に作成されたSDSは法に準拠していないことになります。これはまずい。いえ法に罰則はないので法を無視しても実害はないのですが、法を無視した管理をするのですか御社は?ということになります。まずいですよね。まずくないですか?

[2 危険有害性の要約]
 GHSのピクトグラムが書かれていて、目立つ箇所です。
 ここには物理化学的危険性、健康有害性、環境有害性それぞれについて「区分1」とか「区分外」などと書かれています。
 安衛法はSDSについて第百一条第4項で「取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、当該物を取り扱う労働者に周知させなければならない」ことを定めています。
 具体的には、作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付ける、労働者に書面を交付する、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する(現在ならPCかタブレットを作業場に設置する、でしょう)こと、と定められていますが、さてそれで伝えたいことが伝えたい人に伝わるでしょうか。
 自分が扱っている資材は「眼に対する重篤な損傷性が区分1である」と知ったところで、区分1の意味がわからなければ周知したことにはなりません。しかし、なまじ「掲示する」などと法に書かれているために、それ以上のことをするのは違法だと言い張る人もいます。または、掲示する以上の余計な仕事が増えるのを嫌う人もいます。無理もないですけどね。
 ですが事が起こってからでは遅いのです。なぜ周知する必要があるのか考えてください。扱っている資材の危険性を作業者に理解してもらって事故を未然に防ぐためです。そのためには、作業者に必要な情報を作業者にわかる言葉で伝えなければなりません。省令が定める方法だけでは伝わらないと思いますよ。法は最低限であって、やることはそれ以上にあるものです。


【SDSの読み方(その3)】
[3 組成及び成分情報]
化学物質名または一般名称が書かれているところです。PRTRの元データとしてSDSを扱うために必要な個所です。JIS Z 5253には化学名又は一般名と、化学物質を特定できる一般的な番号及び慣用名又は別名を記載することとされています。
「化学物質を特定できる一般的な番号」には通常CAS登録番号が使われています。「CAS登録番号」という言い方に耳慣れない方もおられるかと思いますが、以前はCAS No.と言っていたものです。
化学科出身の方は学生の頃から普通にCAS No.を使っていたと思いますが、私もそうでした。CAS No.というものは誰もが無償で使える人類共有の財産だと思い込んでいましたが、違うんですね。これは米国のCAS(シーエーエス。キャスではない)という民間企業が、人類がこれまでに発見/合成し報告された化学物質情報を収集し、独自の番号を採番して保管しているものであって、民間企業の私有物です。その所有者であるCASが、所謂CAS No.というものの正式名はCAS Registry numberでありCAS RN®という略記を認める、と数年前に決めました。なお、日本においてはCAS登録番号という名称を認める、とされています。持ち主が名前を決めたのだから従わざるを得ません。とは言え、つい「キャスナンバー」と言ってしまいますが。意識して「シーエーエス登録番号」と言うようには心がけています。本当ですよ。先日も「キャス・・・ナンバーと言っていたシーエーエス登録番号ですが」と、ちゃんと言いましたとも。
他に「化学物質を特定できる一般的な番号」として、CAS登録番号以外には官報公示整理番号やEC No.が書かれていたりします。
 混合物の場合はすべての組成を記載する必要はないとされていますが、JIS Z 7252で規定される混合物のGHS分類根拠となった成分の化学名と濃度範囲を記載することが望ましいとされています。全ての組成を記載する必要はない、であって記載してはいけない、ではないので口を出すことではないのかもしれませんが、成分として水だのアルゴンだのが書かれたSDSを見たことがあります。嘘をついているわけではないので別にいいんですが、おそらく善意で記載したんだろうから別にいいんですが、SDSは何のためにあると思っているのだろうかと、SDSを手にして考え込んでしまいました。実害がなければいい?SDSをシステムに登録して管理していると、こういう些細なことが積み重なって結構な手間になって押し寄せてきます。全社システムの構成によっては、それらのデータの整理と調整に数か月かかったりします。お互い無駄な仕事は減らしましょうよ。


【SDSの読み方(その4)】
[4 応急措置]
応急処置や絶対避けるべき行動などが記載されます。JIS Z 7253では「情報は、被災者及び/又は、応急措置をする者が容易に理解できるようにすることが望ましい。」とされているので、ばく露経路ごと(吸入した場合、眼に入った場合、など)の応急処置がわかりやすく書かれています。ばく露によって予想できる急性症状と遅発性症状のもっとも重要な兆候(JISでは「徴候」の字を使っていますが意味は同じ)を簡潔に記載するとされていますが、「詳細な徴候と症状は項目11の有害性情報に記載されることが望ましい」とされているので合わせて確認してください。
応急処置の例として、皮膚に付着した場合は速やかに皮膚を多量の流水で洗う、眼に入った場合は直ちに清浄な水で15分以上洗浄する、などが書かれています。したがって当然のことながら、これらの記載がある資材を保管及び使用している現場の近くには洗浄用シャワーと洗眼器がなければなりません。もしここに「眼の洗浄が遅れた場合は眼に障害が残る場合がある」と書いてありながら現場近くに洗眼器がなければ、洗浄が遅れれば眼に障害が残る可能性があることを知りながら対策していないことになります。障害が残る可能性がSDSで言及されていなくとも、例えば「予見可能な結果に対する結果回避義務」を民事訴訟で争ったらどうなるか。考えたくない事態を招くでしょうね。
作業者を守るために、また会社を守るために、SDSはよく読みましょう。

【SDSの読み方(その5)】
[5 火災時の措置]
資材が燃えたときにどのような消火剤が適切か、また、使ってはならない消火剤がある場合はそれを記載することとされています。使ってはならない消火剤として棒状水がよく書かれています。棒状水とは聞きなれない言葉ですが、何のことはない連続して放水される普通の水のことです。これの何がいけないのかというと、①燃えている資材が飛び散って火災が拡大する、②電気火災なら消火を行う者が感電する恐れがある、③周囲に禁水性物質があると火災が拡大する、などの危険性があるからです。そのため適切な消火剤として泡消火剤、粉末消化剤、炭酸ガスなどが書かれている場合がよくあります。
ただし、二酸化炭素消火設備については今年4月に東京都新宿区のマンション地下駐車場において、二酸化炭素消火設備が意図せずに作動し、作業員が死亡する痛ましい事故がありました。二酸化炭素等消火設備の設置者、メンテナンス事業者等関係者におかれては、不活性ガス消火設備設置場所に立ち入る場合には十分に危険性を認識した上で、安全な取扱い等にご注意いただきたいという注意喚起が経済産業省から出されています(1)。
また、JISには「火災時の措置に関する特有の危険有害性、消火活動において遵守しなければならない全ての予防措置についての助言などをここに記載することが望ましい」とあるので参考になる情報が記載されています。時々怖いことも書かれています。例えば「火災中に熱分解し、刺激性又は毒性のガスを発生する可能性がある」、「この物質の蒸気は空気より重く、床に沿って移動することがある。遠距離引火の可能性がある」、「加熱すると容器が爆発するおそれがある」など。えらいもん買っちまったなーと思ってしまいますが、仕事で必要な資材なので仕方がない。火災が起こらないように最大限の措置を講じましょう。

(1)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2021/04/20210421_kouatsu_1.html


【SDSの読み方(その6)】
[7.取扱い及び保管上の注意]
[8.ばく露防止及び保護措置]
時間の都合上、「6.漏出時の措置」を飛ばして項目7と8をやります。ご了承ください。

JIS Z 7253では項目7について、おおよそ次のように規定されています。
・取扱 ばく露防止、火災及び爆発防止などの技術的対策、局所排気や粉じん発生防止などの安全取扱注意事項を記載することとされています。
・保管 安全な保管条件について、適切な技術的対策や混合接触させてはならない化学品との分離を含めた保管条件を記載する、特に、安全な容器包装材料についての情報を含む、とされています。
項目8では、許容濃度やばく露を軽減するための設備対策を記載することが望ましいとされています。これらの情報は項目7の情報を補足するとされています。項目7と8をまとめたのはこれが理由です。また、項目8では適切な保護具を推奨しなければならないとされています。
 話が前後しましたが、JIS Z 7253はISO 11014に基づいて規定したものであることが、JIS Z 7253:2019の序文に書かれています。前述の「しなければならない」のISOの当該箇所は "This section shall also contain recommendations on appropriate personal protective equipment" と、 "shall" で書かれている必須事項です。
 と、せっかく適切な保護具が書かれているのだから、取扱場所及び保管場所にはそれらが使える状態で、わかるように、備えていなければなりません。
「ん?備えて「いなければならない」?どこにそんなことが書いてあるんだ!」と思われる方もおられるでしょう。たしかにSDS的にはそんなことは書いてありません。
ところで安衛法(労働安全衛生法)はご存じですよね。

第二十条 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険
二 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険第二十二条 事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなら
ない。
一 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
二 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
三 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
四 排気、排液又は残さい物による健康障害
第二十四条 事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

安衛法による労働災害防止は事業者だけの責務ではなく、労働者にも責務が及びます。

第二十六条 労働者は、事業者が第二十条から第二十五条まで及び前条第一項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。

これらの条項にはすべて罰則があります。罰則があろうがなかろうが、法は守らなければならないし労働災害は防止しなければならないのですけどね。SDSを入手していて、安衛法第百一条に基づいて作業者に周知していながら必要な保護具がなかったら、それはまずいでしょう。

第百一条 事業者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨を常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない。

 

【SDSの読み方(その7)】
[9 物理的及び化学的性質]
この項目には、物理状態(気体/液体/個体)、色、臭い、爆発下限界、引火点、蒸気圧、密度等の情報を提供すること、その詳細は付属書Eを参照すること、とされています。付属書Eには、爆発物については衝撃に対する感度や密閉状態での熱の影響などを示すこと、引火性液体については沸点及び引火点を示すこと、他に自然発火性固体の場合、金属腐食性液体の場合、など物理的危険性クラスに関して記載すべき情報が規定されています。
多くの人がこの項目を読み飛ばしますが、モノによっては読んでおくと役に立つことがあります。
例えば保管場所の日常点検で一番気を付けなければならないのは、順法状況もさることながら現在の保管条件がその資材について安全かどうか、資材が漏れていないか、といったところだと思いますが、安全かどうかを判断するには引火点や爆発限界など、漏れているかどうかは蒸気圧、臭い、記載があれば蒸気の密度が役に立ちます。項目7(取扱い及び保管上の注意)の記述と合わせて把握しておきましょう。また万が一保管場所が水没したら、または場内を運搬中に水たまりに落としてしまったら(まあそんな事はふつうありませんが)、溶解度と密度がわかれば水に溶けるのか、溶けなければ水に浮くのか沈むのかがわかります。回収する時に役に立つ場合もあるでしょうし回収しようがなくともその現場を隔離しなければならないかどうか判断材料になります。
資材の物性を知っていれば、保管場所の点検をする際にしゃがんで床近辺の高さで臭いを確認する必要があるかどうかも判断できます。仮に蒸気圧が低い資材の臭いがしたら、それはかなり漏れているのではないかと警戒もできるわけです。
とは言っても漏らさないことが原則なので、まずはその資材にとって安全な条件を確保すること、万が一漏れた場合の緊急手順を確保しておくことが第一です。

 

【SDSの読み方(その8)】
[10 安定性及び反応性]
当該化学品の反応性、化学的安定性及び特定条件下で生じる危険有害反応可能性が記載される項目です。JIS Z 7253によれば次の情報が含まれます。
・熱、圧力、衝撃、静電放電、振動、その他当該化学品を保管又は使用時に避けるべき物理的条件
・当該化学品と混合又は接触させた場合に危険有害性を生じさせる物質(これを混触危険物質という)
・使用、保管、加熱の結果生じる既知の予測可能な有害な分解生成物

3つめの「既知の予測可能な」がわかりにくいので、JIS Z 7253の基となっているGHS第6版(1)のA4.3.10.6項を見ましたが、「使用、保管、加熱の結果生じる既知の合理的に予測可能な有害な分解生成物」となっていて私の日本語の知識では「既知
の」がどこにかかるのかはっきりしません。仕方ないので原文(2)を見るとList known and reasonably anticipated hazardous decomposition products produced as a result of use, storage and heating. Hazardous combustion products should be included in section 5 (Fire-fighting measures) of the SDS.となっています。そうか、「「既知の予測」可能な生成物」ではなくて「予測可能な既知の生成物」と読めばいいのか。
実際のSDSでは
・粉じん爆発の危険性
・強酸化剤と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす
・強酸化剤、強塩基、酸無水物または酸塩化物と混触すると激しく反応することがある
・燃焼により一酸化炭素や塩化水素などを発生する
・爆発性過酸化物を生成することがある
などが書かれているものがあります。爆発だの有害物発生だの怖いことが書いてあったら、[項目7.取扱い及び保管上の注意]と合わせて保管方法、使用方法など十分に気を付けましょう。

(1) https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/ghs_text.html

【SDSの読み方(その9)】
[11 有害性情報]
 様々な健康影響について、それぞれ簡明かつ完全で包括的な説明とその影響を記載することとされています(JIS Z 7253、項目D.12)。「簡明かつ完全で包括的」とはまたずいぶんとハードルが高いですが、JISに書いてあるので仕方ありません。GHS分類においてデータを提供しなければならない有害性として、急性毒性、皮膚腐食性/刺激性、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性など10項目がJISに挙げられています。例として
-----------------------------------------------
・皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギに本物質を24時間適用したが半閉塞適用において刺激性がみられなかったことから区分外とした。
・発がん性
IARC 100F (2012) でグループ1、ACGIH (7th, 2001) でA3、日本産業衛生学会 (2001) で第 2 群A 、NTP (2011) でK、EU (Access on September 2014) で2と分類されている。これらの分類結果は異なるが、IARC及びNTPを優先し区分1Aとした。なお、ヒトでは、疫学調査が多く実施され、職業ばく露による膀胱がん発症との関連が示唆されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。
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と書いてあったとします。さて安衛法第百一条により、事業者はこの内容を労働者に周知しなければなりませんが、「IARCでグループ1、ACGIHでA3」だからこの資材をどのように注意して扱わなければならないか、読んだだけでわかる人がどれだけいるか、という問題になります。まずいないでしょう。なので管理側がこの内容を、作業者の方にわかるように説明しなければなりません。おいおい困るよ毒性学なんて知らないよという方がほとんどでしょう。私も毒性学なんて専攻していないので自分で調べなければわかりません。つまり、調べればわかる内容だということです。今は(いつに対して「今」だ?)Web検索で簡単に調べることができるので、IARCとは何か、グループ1とはどういう意味か、すぐにわかります。便利な時代になったものですねぇ(だからいつに対してだ?)。
 などと軽口を叩いていい情報ではないのです。

 オルト-トルイジンを含有する資材を用いていた作業場で膀胱がんが発生し、平成28年(2017年)に労災請求されています。オルト-トルイジンはIARCグループ1であるにもかかわらず、作業に使用したゴム手袋をオルト-トルイジンを含む有機溶剤で洗浄して再使用することを繰り返し行ったため、ゴム手袋の内側に残留したオルト-トルイジンに長時間皮膚接触していたことが原因とされています(1)。ヒトに対して発がん性がある物質で内側を洗った手袋を、つける気になりますか?発がん性があることがわかっていたら、そんなことはしないでしょう。
 作業者を危険から守るため、SDSの有害性情報は具体的な防御方法と合わせて説明してください。

(1) https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11305000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Kagakubushitsutaisakuka/0000131502.pdf


【SDSの読み方(その10:最終回)】
項目12から14までを省略して、今月は項目15です。
[15 適用法令]
 JIS Z 7253では、この項目には化学品にSDSの提供が求められる化管法、安衛法、毒劇法の対象物質の名称と該当法令の名称、さらにその法令に基づく規制に関する情報を記載することとされています。ここまではいいですね。JISではさらに、その他の適用される国内法令の名称及びその国内法令に基づく規制に関する情報を、化学品の名称と共に含めることが望ましい、とされています。誤解を招く恐れがあるのがここです。
 極端な架空の例として、「SDSの項目第15に何も書いていなかったから消防法の届出をしなかった」と言い出したらどうなるか、もちろんそんな人がいるはずがありませんが、もしそんなことがあったら、説明するまでもなく違法です。法の執行を猶予する効力などSDSにないことは誰でもお分かりのことですが、ついうっかり勘違いすることのないよう気を付けましょう。実は昔、そんな感じのことを言った人がいたので、念のために余計なことを書きましたすみません。
 この項目には化管法、安衛法、毒劇法はもとより船舶安全法、航空法、輸出貿易管理令なども書かれているSDSもあります。望ましい、とされている事項でありながらも、事業に関わる可能性のある法令をできる限り記載しているありがたいSDSだと思います。ただし、SDSによっては「法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。」と注記があるものもあります。当然ですね。実はこの注記は「厚生労働省/職場のあんぜんサイト(1)」にある「GHS対応モデルラベル・モデルSDS情報」にあるものです。法は法であり、全ての事業者の責任において法を守らなければならないことは言うまでもなく当たり前のことですが、念のために余計なことを書きましたすみません。

JIS Z 7253が規定するSDSの記載項目の最後である項目16は「その他の情報」であり何も書いていないSDSが多いので省略します。
そんな訳で、連載記事「SDSの読み方」は今回が最終回です。長らくご覧いただきましてありがとうございました。
どうぞご安全に。

(1) https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_FND.aspx