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アメリカ メイン州と連邦法による新たなPFAS規制

【1.アメリカ メイン州と連邦法による新たなPFAS規制】
PFASのネットニュースなどの環境汚染情報は増えており、それに呼応するがように法規制の強化されてきています。PFAS規制はEUよりアメリカが先行しているようです。これは、バイデン大統領の政策によるEPA(Environmental Protection Agency)による「PFAS 戦略ロードマップ」が背景にあります。EPAは、2024年4月10日に日本の基準より厳しい飲料水基準として、PFOS、PFOAは4ppt、PFHxSは10pptとする最終規則(*1)を公示しました。
 その後も、PFAS規制では、メイン州法と連邦法に大きな動きがありました。

1.メイン州法
メイン州の製品中の PFAS プログラムは、2021年7月15日にLD 1503(パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質による汚染を阻止するための法律)(*2)として制定されました。LD1503は、意図的に添加された PFAS を含む製品の製造業者は、2023 年 1 月 1 日よりメイン州環境保護局 (DEP) に特定の詳細情報を提供することが義務付けていました。
この義務は、2023年6月8日のLD217(*3)により、2025 年 1 月 1 日まで延長され、通知の必須内容に特定の変更が加えられました。さらに、2024年4月16日にLD 1537(パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質を含む製品を製造する製造業者を支援するための法律 )(*4)によって改正されました。LD 1537の発効日は2024 年 8 月 9 日です。

 

LD 1537により、次項が確立されました。
(i)PFAS を意図的に添加した製品群に対する規制発効日
(ii)新しい販売禁止事項
(iii)禁止事項に対する特定の免除
(iv)現在不可避な使用 (CUU) の決定を受けた製品カテゴリに対する報告プログラム

 

メイン州のPFAS規制はアメリカの中で先進的な規制で、理解を求めるためにWebページ(*5)で情報公開をしています。

(1)意図的に添加されたPFASを含む製品の販売禁止
(i)2023年1月1日    
カーペットまたはラグ生地の加工
(ii)2026年1月1日    
クリーニング製品
調理器具製品
化粧品
デンタルフロス
児童向け製品
生理用品
繊維製品(例外あり)
スキーワックス
布張りの家具
意図的に添加された PFAS を含まないが、フッ素化容器または意図的に添加されたPFAS を含む容器で販売、販売提供、または販売目的で配布される製品がリストされています。
(iii)2029年1月1日    
人工芝
「PFAS 化学物質で作られています」という開示がない限り、厳しい雨天時の屋外用アパレル
(iv)2032年1月1日    
メイン州で販売される、PFAS が意図的に添加されたすべての製品(製品内でのPFAS の使用が現在避けられない使用である場合を除く)。意図的に添加された PFAS を含まないが、フッ素化容器または意図的に添加されたPFAS を含む容器で販売、販売の申し出、または販売のために配布される製品。
(v)2040年1月1日    
冷却、暖房、換気、空調、または冷蔵設備。
冷媒、泡、またはエアゾール噴射剤。

(2)販売禁止の対象外となる製品カテゴリー
新たに対象外製品が拡大されました。
(i)連邦法でPFASの存在が規制されている製品
(ii)パッケージ
(iii)中古品または中古品部品
(iv)消火または消火泡
(v)医療機器、医薬品等、FDA規制対象製品
(vi)FDA、USDA、EPAによって規制されている獣医用製品
(vii)公衆衛生、環境、水質検査用に開発された製品
(viii)DOT、FAA、NASA、DOD、またはDHSの基準または要件を満たす必要がある製品
(ix)自動車および自動車機器
(x)水上バイク
(xi)半導体、製造に使用される機器および材料を含む
(xii)非消費者向け実験装置または電子機器
(xiii)上記免除対象製品の製造または開発に直接使用される機器

(3)Currently Unavoidable Uses(CUU)
CUU の決定は、主要な実質的な規則制定を通じて行う必要があります。最初に環境保護委員会によって採択され、その後、議会に提出されて審査される必要があります。メイン州の州法制定手順(*6)は明確になっています。この手順で、2025 年1月に CUU 提案を議会に提出するために提案と一般からのコメントを募集します。法令では、CUU を「この条項に基づく規則により、保健、安全、または社会の機能に不可欠であり、代替手段が合理的に利用できないと当局が判断した PFAS の使用」と定義しています。
CUU 規則制定に組み込むために草案第 90 章(POSTING DRAFT -Chapter 90:Products Containing Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances)(*7)で提案されています。
2024 年 1 月から、CUU 決定を求める人々からの提案依頼を受け付けています。提案は、製造業者が個別に、または共同で提出できます。これらの決定は、特定の産業セクター内の製品における PFAS の使用に関するものになります。個々の製品カテゴリごとに次項を提出する必要があります。
i.該当する場合は、世界商品分類 (GPC) のカテゴリとコード、または GPC が該当しない場合は統一関税システム (HTS) コードを含む、製品の種類に関する簡単な説明を記入します。
ii.製品の意図する用途を説明し、それが健康、安全、または社会の機能にとってどのように不可欠であるかを説明します。
iii.製品添加 PFAS の特定の使用が製品の機能にとっていかに不可欠であるかを説明します。PFAS のこの使用が連邦法または州法または規制によって義務付けられている場合は、その要件の引用を示します。
iv.PFAS のこの特定の用途に対して、合理的に入手可能な代替手段があるかどうかを説明します。
v.連絡先情報の提供

(4)PFASの定義
 草案第90章のPFASの定義は以下となっています。
P.パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)「ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質」または「PFAS」とは、少なくとも1つの完全フッ素化炭素原子を含むフッ素化有機化学物質のクラスのメンバーを含む物質を意味する。

注:米国環境保護庁(EPA)は、PFASとして特定された化学物質のWebページでPFASと見なされる物質が何であるかを明確にしています。意図的に添加された PFAS を含む、メイン州内で販売、販売目的の提供、または販売目的で流通する製品はすべて、その物質がどのリスト(*8)に掲載されているかに関係なく、同省に報告する必要があります。
 今後、TSCA 第8条(a)(7)でPFASデータの報告義務(*9)により、規制対象PFASや適用除外要件が具体化されると思われます。

注:38M.R.S. § 1614(*10)は、CAS番号による意図的添加PFASの届出を義務付けているため、CAS番号が割り当てられていない化学物質は、本章の対象とはなりません。ただし、CAS 番号が割り当てられているが、他の者によって保留されている、または他の方法で入手できない化学物質は対象となります。なお、§ 1614は「意図的に添加された PFAS」に、PFAS の分解副生成物も含めています。
(4)今後の予定
今後の予定は、新たに改正された法律に基づき、以前に提案された規則第 90 章を書き直しています。改訂案では、プログラムの実施の詳細と、今後の販売禁止に適用される CUU 提案に必要な基準の概要が提供されます。一般的な報告要件が削除されたため、CUU 提案は販売が禁止されている製品カテゴリにのみ適用されます。改訂草案第 90 章は、2024 年夏半ばに一般公開され、コメントを募集する予定です。なお、飲料水規制対象となるPFAS(*11)は、パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質として知られる人工化学物質のグループを指します。これらの化学物質には、Resolve 2021、第82章(特定の物質および汚染物質の最大汚染物質レベルを確立することにより公共飲料水の消費者を保護するための決議)に含まれる6つのPFAS化学物質を含む数千種類があり、以下に記載されています。
 ペルフルオロオクタン酸(PFOA)
 ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)
 ペルフルオロノナン酸(PFNA)
 ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)
 ペルフルオロヘプタン酸(PFHpA)
 ペルフルオロデカン酸(PFDA)

(5)他州のPFASの意図的添加制限法
 メイン州以外で確認できたPFASの意図的添加制限法は以下です。
(i) Minnesota州(*12)
(ii) Connecticut州(*13)
(iii) Washington州 食品包装材(*14)
(iv) New York州 アパレル製品(*15)
(v) EPAのPFASの各州の規制情報(*16)

 PFASの意図的添加製品を制限する潮流は、メイン州以外でも起きています。細かには各州法に差異はありますが、大きくは同じ方向性で規制していますが、メイン州が先行した動きをしているといえます。

 

2.連邦法 HR 8074「2024年 永遠の化学物質規制及び説明責任法」案
(1)法規制の目的
 連邦法のHR8074(Forever Chemical Regulation and Accountability Act of2024)(FCRAA)案(*17)が議会で審議されています。FCRAAの目的は以下です。
(i)パーフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル物質の非必須用途の生産を段階的に廃止 
(ii)パーフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル物質の放出を禁止 
(iii)パーフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル物質の放出を禁止 
(v)その他

 パーフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル物質は、以下の15 U.S.C.8931(2)(B) (PFAS法)(*18)の(定義)が引用されています。
(i) パーフルオロアルキル物質
「パーフルオロアルキル物質」という用語は、すべての炭素原子が完全にフッ素化された炭素原子である化学物質を意味します。
(ii) ポリフルオロアルキル物質
「ポリフルオロアルキル物質」という用語は、少なくとも 1 つの完全にフッ素化された炭素原子と、少なくとも 1 つの完全にフッ素化されていない炭素原子を含む化学物質を意味します。
(iii) 完全にフッ素化された炭素原子
「完全にフッ素化された炭素原子」という用語は、すべての水素置換基がフッ素に置き換えられた炭素原子を意味します。

(2) 非必須用途の段階的に廃止
10年以内にPFASの非必須用途を段階的に廃止
非必須用途の段階的廃止を完全に完了するには、まず特定の製品の禁止から始め、その後、必須用途として指定されていない限り、すべての製品に制限を拡大することが提案されている。
具体的には、以下の PFAS 含有製品を州際取引で販売、販売の申し出、販売目的で配布することは禁止されている。
・施行から1年後
カーペットまたはラグ・生地の加工・食品包装および容器・児童向け製品・・
・施行から2年後:
化粧品・室内用テキスタイル家具・室内用布張り家具・アクセサリー・・
・制定から4年後:
屋外用テキスタイル家具・屋外用布張り家具
・施行後5年:
厳しい雨天時に適したアウトドアウェア 
・制定から10年後:
必須ではないすべての用途

(3) 必須用途とは
必須用途は、第2条(定義)で示されています。
使用が以下の理由であれば必須使用である。
(A) 社会の健康、安全、または機能にとって重要である。
(B) アイテムまたはプロセスが機能するために必要である。
(C) より安全な代替品が利用できない使用である。
必須用途の決定は、Sec101(d)の手順により国立科学アカデミーが評価します。

(4) 第 104条 パーフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル物質放出の段階的廃止
 非必須用途を段階的に廃止に加えて、第 104条で環境への放出を規制します。
(a)制定日から 10 年後から、製造業者または使用者が、パーフルオロアルキル物質またはポリフルオロアルキル物質の検出方法の検出閾値を超える量の及び環境に流入することを許容する方法で放出することは違法とする。

PFAS規制は、用途が幅ひろく、知らず知らずのうちに使っていることが多く、多くの支援情報が出されています。TSCA 第 8(a)(7) 条に基づく「PFAS 報告手順」(*19) や 「小規模事業者コンプライアンス ガイダンス 」(*20)があり、FAQ(*21)(*22)などがWebページで公開されています。
 さらに、2024年5月24日に、実務的なFAQ(*23)が新たに公開されました。

 EUでも、包装材規則案でも、前文第27文節で「PFAS の制限に影響を与えることなく、この規則は、人の健康または環境に対する容認できないリスクがない限り、化学的安全性上の理由、または食品安全性に関連する理由で物質の使用を制限することを
可能にすべきではない。」としています。

 PFAS規制は、アメリカ、EUでも厳しい規制を始めており、一過性でなく対応を改めて見直す必要がありそうです。

引用先
*1:最終規則
https://www.epa.gov/system/files/documents/2024-04/pfas-npdwr_fact-sheet_general_4.9.24v1.pdf
*2:LD1503
https://www.mainelegislature.org/legis/bills/getPDF.asp?paper=HP1113&item=5&snum=130*3
:LD217
https://legislature.maine.gov/ros/LawsOfMaine/breeze/Law/getDocById/?docId=101620*4
:LD 1537
https://www.mainelegislature.org/legis/bills/getPDF.asp?paper=SP0610&item=3&snum=131
*5:メイン州 PFAS情報
https://www.maine.gov/dep/spills/topics/pfas/PFAS-products/index.html
*6:メイン州の州法制定手順
https://legislature.maine.gov/house/house/Documents/PathofLegislation

*7:CUU 規則制定に組み込むために草案第 90 章
https://www.maine.gov/dep/bep/2023/01-19-23/Chapter%2090%20Draft.pdf*8:
PFASリスト
https://comptox.epa.gov/dashboard/chemical-lists/pfasmaster
*9:PFASデータの報告義務
https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2023-10-11/pdf/2023-22094.pdf
*10:38M.R.S. § 1614
https://legislature.maine.gov/statutes/38/title38sec1614.html
*11:飲料水規制対象となるPFAS
https://www1.maine.gov/dep/spills/topics/pfas/index.html
*12:Minnesota州
https://www.pca.state.mn.us/air-water-land-climate/2025-pfas-prohibitions
*13:Connecticut州
https://www.cga.ct.gov/2024/ba/pdf/2024SB-00292-R01-BA.pdf
*14:Washington州 食品包装材
https://ecology.wa.gov/waste-toxics/reducing-toxic-chemicals/addressing-priority-toxic-chemicals/pfas/food-packaging
*15:New York州 アパレル製品
https://dec.ny.gov/environmental-protection/help-for-businesses/pfas-in-apparel-law
*16:EPAのPFASの各州の規制情報
https://www.epa.gov/pfas/us-state-resources-about-pfas
*17:HR8074
https://www.govinfo.gov/content/pkg/BILLS-118hr8074ih/html/BILLS-118hr8074ih.htm
*18:5 U.S.C. 8931(2)(B) (PFAS法)
https://uscode.house.gov/view.xhtml?path=/prelim@title15/chapter115&edition=prelim

 

情報提供 (一社)東京環境経営研究所
(2024年8月)
 

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