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ストックホルム条約(POPs条約)第12回締約国会議(COP12)結果

 

【1. ストックホルム条約(POPs条約)第12回締約国会議(COP12)結果】

1.       はじめに:

 2025年4月28日~5月9日まで、スットクホルム条約、ロッテルダム条約、バーゼル条約の締約国会議がジュネーブで開催された。ストックホルム条約は第12回締約国会議(以下COP12)となり、経産省、環境省、外務省の担当官に加え、関連業界団体の代表がオブザーバーとして参加した。会議では、①条約への新規物質追加 ②COP11で決定した「UV328」の適用除外項目追加 ③「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質」、「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)」の「消火薬剤用

途」への適用除外延長について議論された。

2.       条約への新規物質追加:

 ストックホルム条約では、新規物質の追加に関しては、専門家からなる検討会(以下POPRC)で議論した上で、COPに勧告する。2024年のPOPRC20では、「クロルピリホス(農薬)」「中鎖塩素化パラフィン(MCCP)(炭素数14~17 、塩素化率45 wt%以上のもの)(難燃剤、潤滑剤等)」「長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA) とその塩及びLC-PFCA 関連物質(フッ素樹脂重合助剤等)」を一定の適用除外を認めた上で、条約の附属書A(廃絶)に収載するようにCOP12で勧告することとなっており、勧告に基づき3物質の条約付属収載と適用除外について議論された。

(1)「クロルピリホス」:

 クロルピリホスについては、会議初日(4/28)の議題となった。会議ではインドが、国内でクロルピリホスが登録・使用されており、同国の食料安全保障の観点から附属書Aへの収載に反対の意見を表明した。アフリカ、中南米等から実際の害虫と作物の観点から適用除外用途の追加が要望された。各国要望を加えると14項目になった適用除外についてコンタクトグループ(4/29午前)で整理したうえで合意が成立した。

<結論>

・附属書A収載(廃絶)

・適用除外:*農業用途での一部の農作物における特定の害虫の防除

*農業用途でのハキリアリ及びイナゴの防除

*牛のダニ駆除

*建築物の基礎に用いる木材の穿孔虫、シロアリからの保護

(2)「中鎖塩素化パラフィン(MCCP)(炭素数14~17、塩素化率45wt%以上)」: MCCPについて、4/29から議論された。会議ではロシアがPOPRCでのリスク評価を自国の手法による再評価を求め、現時点での附属書Aへの収載に反対意見を示した。EU、シンガポール、中国、米国がMCCPについて、「用途が広範であること」及び「サプライチェンの複雑さ」から使用している実態の特定が難しいことを指摘した。4/29以降のコンタクトグループでは、MCCPの「化学的定義」と「適用除外」が議論された。MCCPの金属加工油剤用途については、ステンレスやチタンといった難加工材やブローチ加工のような特殊加工では代替が進んでおらず、POPRCでは我が国からも適用除外が必要であることを意見表明している。またEUからは昨今の情勢を踏まえ、軍事用途の適用除外項目の追加要請があった。今回、MCCPの化学的定義や適用除外が広範になったことをうけ、COP14(2029年)でMCCPの「化学的定義」、COP15(2031年)で「適用除外」の見直しを行うために今後のPOPRCで検討することになった。

<結論>

・附属書A収載(廃絶)

・適用除外:

*地下炭鉱で使用される硬質織物製コンベヤベルト

*断熱用発泡エラストマー

*特定の軟質塩ビ用途(屋内生活空間(商業分野を除く)での使用を除くワイヤー及びケーブル以外の建設分野、建設分野のワイヤー及びケーブル、医療機器及び体外検査用機器のワイヤー及びケーブル、食品包装を除く包装分野のカレンダーフィルム)

*特定の接着剤及びシーラント(ドア及び窓のシーリングに使用されるポリサルファイドシーラント及び一液式ポリウレタンフォーム、防水及び防食コーティング、航空宇宙及び防衛用途(ポリウレタン接着剤、不正開封防止パテ等))

*航空宇宙及び防衛製品の非構造接着に使用されるテープ

*子供用製品を除く皮革の加脂成分

*緊急対応用発火装置

*弾薬及び弾薬マーキング用の塗料及びコーティング剤

*特定の用途の金属加工油剤(2036年まで)

(航空宇宙、防衛、全ての自動車、医療機器・体外診断用機器及び測定、分析・製造・制御・監視・試験・検査用の機器として使用される電気電子機器、農業・建築・建設・林業、造園に使用される機械及び工具、エネルギー及び発電、石油及びガスの採掘、化学製品の生産及び精製、原子力発電施設、低炭素エネルギー技術及び再生可能エネルギー技術、非電気電子機器分野の医療機器)

*特定の用途の修理及び交換部品に使用されるポリマー及びゴム(2041年まで)(陸上自動車及び農業・建設・林業・造園に使用される機械の部品、医療機器・体外診断用機器及び測定・分析・製造・制御・監視・試験・検査用の機器として使用される電気電子機器、航空宇宙及び防衛用途)

*特定の効果(例えば、音、煙、光)を得るための弾薬用火工品防御装置(2041年まで)

*極度の温度から保護するための宇宙防衛機器及びその包装用の膨張性コーティング剤及び塗料(2041年まで)

*宇宙防衛機器の修理及び交換部品に使用するためのコーティング剤及び塗料(2041年まで)

(3)長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩及びLC-PFCA関連物質(炭素数9~21 までのもの):

 LC-PFCAについても4/29から議論が始まった。EUはLC-PFCAの代替として、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に置き換えることを避ける必要があるとした。また、今後のPOPRCでLC-PFCAの物質リストを検討することになった。

<結論>

・附属書A収載(廃絶)

・適用除外:

*交換部品として設計された半導体(2041年まで)

*大量生産を中止した自動車の交換部品(2041年まで)

3.UV328(COP11で附属書A収載決定)

エチオピアからCOP12への議題として、UV328の新規適用除外要望があった(UNEP-POPS-COP12-31)。要望は、「接着剤、ポッティングコンパウンドを含む民間航空機および軍用航空機(およびCOP-12の前にさらに特定される可能性のある、UV328がまだ存在する特定の追加の限定された特定の用途)」という航空機用途の追加である。使用量は1機あたり約10gではあるが、既に条約に決定したものを見直すことが、条約の法的拘束力を弱め、POPRCでの検討時に、業界の関与が弱まり、ひいては反競争的な業界慣行が助長されるとの懸念があるので、この後の前例とならないようにすることを留意した上で見直しが決定された。

<結論>

・UV328に関する適用除外追加:

*「UV-328」(主な用途:紫外線吸収剤)に航空機の断熱ブランケット及びデッキ用の水密テープ、航空機の構造及び機械、内装、電気系統、非常用、推進、環境制御、飛行制御システム用のポリウレタン及びポリアミド接着剤、ポリウレタンコーティング用途での使用(2030年末まで)

4.PFOA類/PFOS類の泡消火剤用途適用除外延長について:

 韓国からの要望に基づき「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及び PFOA関連物質」(主な用途:フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤等)及び「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)」(主な用途:撥水撥油剤、界面活性剤)の液体燃料から発生する蒸気の抑制及び液体燃料による火災のためのシステム(移動式及び固定式)における泡消火剤用途での製造及び使用に関する適用除外については、4年間延長することとなった。

5.今後の国内法展開:

 今回、条約の附属書Aに収載された3物質は、化審法の「第1特定化学物質」に指定され国内での管理対象(廃絶)となる。適用除外用途については、各産業界からの適用要望等ヒヤリングの上、政令として公布される。

 

参考文献

・ストックホルム条約第12回締約国会議(COP12)の結果の概要(経産省):

https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250513001/20250513001-1.pdf 

・ストックホルム条約第12回締約国会議(COP12)の結果の概要(環境省):

https://www.env.go.jp/content/000314122.pdf 

・IISD:

https://enb.iisd.org/basel-rotterdam-stockholm-conventions-brs-cops-2025

 

(2025年7月)
 

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