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US FDAの食器の規制

1.最近の傾向
 食品や食卓用小物などの食器類をアメリカなどに輸出する際の法規制に関するお問い合わせが増えています。ことに、アメリカ向けでは、高額のPL訴訟の回避や規制内容が難解であるなどが背景になっているようです。アメリカ法は判例法で分かり難いといわれていますが、解釈の部分は、判例が重視されるものの、成文法で詳細に規定されています。
 食品関連の成文法は、連邦食品医薬品化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act (FD&C Act))で規定され、米国法典(United States Code US Code)のTitle 21で告示(*1)され、食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)が医療品や食の安全を規制しています。
FDAが規制する「食品の製造に関するガイド」(*2)が公開されており、そのなかで包装および食品接触物質(FCS)も対象であることを解説しています。
 FCSの定義は、FD&C Act の§321で、「食品添加物には、食品の製造、梱包、加工、処理、包装、輸送、または保管に使用することを目的とした物質を含める。」としています。食品加工装置や食品包装材も「食品添加物」としてFD&C Actの対象となります。

 

2.事前申告
FCSは、FD&C Act の§348 (食品添加物)(h) で、「食品接触物質の製造者又は供給者は、その食品接触物質の納入の少なくとも120日前に、その食品接触物質の識別情報及び使用目的を長官に食品接触物質申告(FCN)をする。使用目的は、発がん性がないなどの安全性の立証を含めなくてはならない。」とし、事前申告が要求されます。
FCNのインベントリ(*3)は公開されていますが、事前申告で特定された製造業者または供給業者に対してのみ有効です。

3.適用免除
 連邦規則集(e-CFR)§ 170.39 (食品接触物品に使用される物質の規制の閾値)で事前申告の適用免除要件が告示(*4)されています。食品接触成形品(例えば、食品包装または食品加工装置)に使用され、食品中に移行する、または移行すると予想される物質は、「発がん性を示さず化学構造から発がん性物質であると疑う根拠はない。」「がん原性不純物を含有していない」などの要件が示されています。FDAへの適用免除申請はガイド(*5)が示され、免除の付与インベントリ(*6)が告示されています。適用免除のしきい値は、一般的に適用され、製造業者または供給業者に関係なく、リストされた使用目的に対する食品接触物質(FCS)に有効です。このリストには、要求を行った会社の名前、物質名、食品添加物としての規制の免除を受けた物質の特定の用途、および物質の使用に関する適切な制限が含まれています。

4.安全が確認された物質(generally recognized as safe (GRAS))
 食品に意図的に添加される物質は食品添加物であり、FDAによる市販前の審査および承認の対象となりますが、§ 170.30(*7)によりFD&C Actの制定(1958年)前からの安全に使われてきた物質及び新たに開発された物質で資格のある専門家が食品に使用での安全を認めれば、安全が確認された物質(GRAS)としてFCNが免除されます。

 GRASのリストは、連邦規則に、21 CFR 184( 食品中のGRASと確認された物質と要件)(*8)、21 CFR 186( 食品包装用GRASとして確認された物質と要件)(*9)が告示されています。
 GRASの物質は、自由に使えるのではなく、用途、純度、GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)の要求などがされています。GRASはすべての物質の使用のリストではなく、GRASのリスト以外も対象となりますが、適合確認はFDAに特定されていません。連邦規則21 CFR part 170, subpart E § 170.205 (GRAS通知を提出する機会)(*10)の「いかなる者も、物質がその意図された使用条件の下でGRASであるというその者の結論に基づいて、物質が連邦食品医薬品化粧品法第409条の市販前承認要件の対象ではないという見解をFDAに通知することができる。」としています。
 FDAはFAQ(*11)で「GRAS通知手続きは任意であるが、FDAは、GRAS条項に基づいて食品物質を販売しようとする者にはいずれも、GRAS通知書をFDAに提出することを強く奨励する。」としています。

 このように、GRASは若干戸惑いを感じるアメリカ固有の運用ですが、食品あるいは食品接触材に関して多くの国でFD&C Actと同様に規制しています。
 食品接触材規制は、食器(テーブルウェア、ディナーウェア)だけでなく、食品が触れる物が対象ですので、輸出のあたっては、輸出先国の規制を確認することが肝要です。

 

EU 規則(EC)1935/2004(*12)、PIM 規則(EU)10/2011(*13)
オセアニア オーストラリアニュージーランド食品基準法(*14)
中国 中華人民共和国食品安全法(*15)、GB 4806.1 (食品安全国家?准 食品接触
材料及制品通用安全要求)
ブラジル 法(Lei No 9782)(*16)
インドネシア 食品法(NOMOR 7 TAHUN 1996)(*17)
日本 食品衛生法(*18)

 

引用先
*1:http://uscode.house.gov/browse/prelim@title21&edition=prelim
*2:https://www.fda.gov/food/food-industry/producing-food-product-regulated-fda
*3:https://www.cfsanappsexternal.fda.gov/scripts/fdcc/?set=FCN
*4:https://www.ecfr.gov/current/title-21/chapter-I/subchapter-B/part-170/subpart-B/section-170.39
*5:https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/guidance-industry-submitting-requests-under-21-cfr-17039-threshold-regulation-substances-used-food
*6:https://www.cfsanappsexternal.fda.gov/scripts/fdcc/index.cfm?set=TOR&sort=File_ID&order=DESC&startrow=51&type=basic&search=
*7:https://www.ecfr.gov/current/title-21/chapter-I/subchapter-B/part-170/subpart-B/section-170.30
*8:http://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=e956d645a8b4e6b3e34e4e5d1b690209&mc=true&node=pt21.3.184&rgn=div5
*9:http://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=e956d645a8b4e6b3e34e4e5d1b690209&mc=true&node=pt21.3.186&rgn=div5
*10:https://www.ecfr.gov/current/title-21/chapter-I/subchapter-B/part-170/subpart-E/section-170.205
*11:https://www.fda.gov/media/101042/download
*12:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32004R1935
*13:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32011R0010
*14:https://www.legislation.gov.au/Details/C2011C00117
*15:http://www.gov.cn/zhengce/2009-02/28/content_2602225.htm
*16:https://www.gov.br/anvisa/pt-br
*17:https://peraturan.bpk.go.id/Home/Download/47092/UU%20Nomor%207%20Tahun%201996.pdf
*18:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000233
 

​(2022年7月)

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