プラスチック規制の潮流(韓国の規制の潮流)
【1. プラスチック規制の潮流(韓国の規制の潮流)】
1.韓国のプラスチック規制の源流
韓国のプラスチック規制は、持続可能な資源循環社会を作るために必要で基本的な事項を規定している資源循環基本法(*1)(現行の循環経済社会転換促進法(*2))により規定された、第1次資源循環基本計画(*3)に基づいています。第1次資源循環基本計画は、資源の効率的利用、廃棄物の発生抑制及び循環利用促進に対する10年単位(2018~2027)のロードマップであり、循環システムを4つの段階(生産、消費、処分、リサイクル)に区分し、リサイクル前の廃棄物の排出量の削減とともに、地域別の条件に合致した廃棄物管理の最適化の戦略を掲げています。さらに、2027年まで国内総生産量(GDP)に比べ廃棄物発生量を20%削減し、循環利用率(実質リサイクル率)を82%まで向上させることを目標値として掲げています。
特に消費段階では、代替可能製品がある使い捨て品の使用を「最小化(ゼロ化)」するなど、環境にやさしい消費を促進して廃棄物の発生を減らしていくとしています。具体的な行動計画として、市場調査を通じて、使い捨てカップ、プラスチックストローなどの使用を段階的に禁止し、さらに多回使用品への代替を推進し、二重包装を法的に制限するなど不要な過大包装を抑制すると明記されています。
2.行動計画の法制化
これらの行動計画を反映した法規制が、資源の節約とリサイクル促進に関する法律(*4)です。本規制は、廃棄物の発生を抑制し、再活用を促進するなど資源を循環的に利用することにより、環境の保全と国民経済の健全な発展に資することを目的としています。本規制第10条では、生分解性樹脂製品を除く使い捨て品における無償提供の禁止を規定しています。使い捨て品とは、同じ用途に一度使用するように作られた製品と定義され、資源の節約とリサイクル促進に関する法律施行令(*5) 別表1に定められた製品です。使い捨て品は、割り箸や爪楊枝などプラスチック以外の製品も含まれますが、皿、容器、コップ、ストロー・マドラー、カトラリー(ナイフやフォークなど)といった飲食用途の製品からショッピングバッグや傘用ビニール袋など一般用途の製品まで12の製品群が分類されています。さらに、資源の節約とリサイクル促進に関する法律施行規則(*6) 別表2では、その製品分類ごとに対象施設、業種または遵守事項(禁止または販売にて提供可能など)が規定されています。なお、対象施設や業種については、同施行令第8条にて説明されています。
3.規制の強化と緩和
当初、本規制は、該当製品や規制対象を制限(一定規模の施設や業種に限定)して施行されてきましたが、近年その適用範囲が拡大される傾向にあります。2022年11月24日に同施行令 別表1が改定(*7)となり、禁止となる使い捨て品と規制対象となる対象事業者が大幅に拡大されました。今回の改定は、2019年に大規模店舗(3,000㎡以上)および165㎡以上のスーパーマーケットで禁止されていたビニール袋の使用が、中小型店舗にも適用が拡大されました。さらに、禁止される品目においても紙コップ・プラスチックストローなどが追加され、その規制内容が強化されました。ただし、韓国環境局はコーヒー専門店などで使い捨て品の使用が日常化した状況で、今回施行される使い捨て品の削減が現場負担を減らしながらも実質的な減量成果を得るためには細かい段階的なアプローチが必要であると判断しました。そのため、新たに規制強化の対象となる、ビニール袋、プラスチックストロー、マドラー、紙コップについては、1年間の啓蒙期間を設け、制度の定着を図ることとなりました。
2023年11月7日、韓国環境局は啓蒙期間が終了し、使い捨て品の使用を禁止する規制の開始が迫るなかで、規制開始期限延長を含む管理案(*8)を公表しました。今回の管理案はこれまで啓蒙活動を行ってきた品目を対象に、小規模自営業者の負担を緩和し、店舗や施設などの現場の混乱を最小化しながら、使い捨て品の使用を減らすことを目的として、ビニール袋やプラスチックストローについては、使用禁止の規制開始期限を延長するものです。
ビニール袋については、ショッピングカート、生分解性袋、有料袋など代替品の使用が定着してきている動きがあり、こうした肯定的な変化を考慮して、ビニール袋は取り締まり強化による過怠料の賦課よりも代替品の使用を生活文化に定着させることに注力するとしています。
プラスチックストローについては、代替として、コーヒー専門店は主に紙ストロー、生分解性ストローなどを使用してきたものの、紙ストローは価格が2.5倍以上高く、飲み物の味を落とし、簡単に汚れて使いにくいという声があり、顧客のクレーム対応にも迫られていると説明されています。今回、こうした事態を考慮してプラスチックストローの啓蒙期間を延長し、その期間については、国連プラスチック汚染条約など国際動向、代替品市場状況を考慮して、今後決定するとしています。
4.国際的な動向
海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある条約を策定するために第5回政府間交渉委員会(INC-5)が、2024年11月25日から12月1日まで釜山で開催されることが公表されています。韓国政府は、INC-5において、環境分野における国際規範の確立に貢献し、プラスチック汚染の根絶と循環型経済への移行を先導するとしています。(*9)
引用先
(*1) 資源循環基本法
https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?efYd=20200526&lsiSeq=218223#0000
(*2) 循環経済社会転換促進法
https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsId=012567&ancYnChk=0#0000
(*3) 第1次資源循環基本計画
https://www.me.go.kr/home/web/board/read.do?boardMasterId=1&boardId=907110&menuId=286
(*4) 資源の節約とリサイクル促進に関する法律
https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=247507&efYd=20240101&ancYnChk=0#0000
(*5) 資源の節約とリサイクル促進に関する法律施行令
https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=256683&efYd=20231212&ancYnChk=0#0000
(*6) 資源の節約とリサイクル促進に関する法律施行規則
https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=257949&efYd=20240101&ancYnChk=0#0000
(*7) 韓国環境部ニュースリリース:11月24日施行の使い捨て品削減制度について
https://www.me.go.kr/home/web/board/read.do?menuId=10525&boardMasterId=1&boardCategoryId=39&boardId=1557410
(*8) 韓国環境部ニュースリリース:使い捨て品に関する新しい管理案について
https://www.me.go.kr/home/web/board/read.do?pagerOffset=0&maxPageItems=10&maxIndexPages=10&searchKey=title&searchValue=&menuId=10525&orgCd=&condition.fromDate=2023-11-05&condition.toDate=2023-11-08&boardId=1635310&boardMasterId=1&boardCategoryId=&decorator=
(*9)韓国環境部ニュースリリース:国連プラスチック汚染条約 第3回政府間交渉委員会(INC-3)の開催について
https://www.me.go.kr/home/web/board/read.do?menuId=10525&boardMasterId=1&boardCategoryId=39&boardId=1638020
(一社)東京環境経営研究所)
(2024年6月)