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連載:chemSHERPAが来た・・・

 

その1 うちの材質はどれだ
・うちはカーボンを加工した部材を扱っているんだけど、chemSHERPAの材質コードはどれだ?
・シリコンウェハーに酸化被膜を付けているが材質コードに「酸化被膜」がないぞ?
・ルテニウムめっきを加工しているが、材質コードにルテニウムがない!
現場で材料を扱っていると、chemSHERPAの材質コードに当てはまるものがなくて困ることがときどきあります。
とはいってもお客様の要求によりchemSHERPAデータを作らなければならない。
そういうときはいちばん近いものを選んで、コメント欄にその旨を記載するのが安全です。
・カーボンは、無機物だと思えば「その他無機化合物」を選ぶことができます。
もしカーボンを有機物だと思ってしまうと、解がなくなります。実は無機物と有機物の区別は学術的に明確に定義されていないもののようなので、この際、無機物と思って「その他無機物」を選んではどうでしょうか。・ルテニウムめっきの場合、ルテニウムは周期律表で第5周期第Ⅷ族ですが、同じ第5周期第Ⅷ族にパラジウムがいるので、材質用途「6.(表面処理系)めっき」を選んで材質「S010 パラジウムめっき」を選択してコメント欄に「ほんとはルテニウムなんです」と書くしかありません。
まったくもって困ったものですが、お客様がchemSHERPAデータを出せと言い、工夫しないとchemSHERPAデータを作れない以上、お客様の要求を優先するしかないでしょう。
chemSHERPAというツールはツールでしかないので、ツールとして割り切って使っていくのが現実的だと思います。

 

その2 ファイルが開かない
?取引先様からchemSHERPAのファイルが送られてきたけど開かない!
?.shaiファイルが来るって聞いていたのに、何このXMLって?
?chemSHERPAのデータはどこにアップロードすればいいの?
chemSHERPAはJAMPという組織が運用していますが、ユーザー様から様々な疑問が寄せられていると聞いています。ファイル形式などについて多いのがこれら3つです。
昭和生まれの方は昔のパソコンを覚えておられるでしょうか。ブラウン管テレビにキーボードがくっついたような代物です。平成生まれの方は、パソコンを操る天才幼稚園児だったら覚えているかもしれません。令和生まれの人が知っているはずはない。
昔のパソコンは、ソフトとデータが別々のフロッピーに入っていました。使いたいソフトが入っているフロッピー(フロッピーを知らない?・・・そうですか)とデータが入っているフロッピーをそれぞれドライブに入れてから、ソフトを立ち上げ、ソフトのメニューでもう一枚のフロッピーからデータを読み込むという、一手間も二手間もかかる代物でした。その後Windowsというモノが出てくると、Macを使うのと似た感じでファイルをダブルクリックするだけでファイルを開けるようになりました。Macに比べるとまだまだ電子計算機臭がプンプンでしたが。
「ファイルが開かない」とお困りの理由の多くはこれです。昔のパソコンなのにWindowsのようにファイルを開こうとするから開けないのです。まずchemSHERPAというアプリを立ち上げてから、アプリの機能で読みたいデータを読み込めば開けます。Windowsのように.shaiファイルをダブルクリックしてもデータは開きません。
その他のお困りネタについては、たぶん次号で。


その3 なんだこのSVHCは
chemSHERPAデータを作成していて、ある物質を入力するとSVHC(注1)のフラグが立つことがあります。「あれ?これってECHA(注2)のリストにないのに」と思うことがありませんか?ECHAのリストにないのにchemSHERPAでフラグが立つ。なぜでしょうか。
(注1)SVHC:「この化学物質とっても心配」(意訳)。Substances of very high
concernの頭文字。普通は「高懸念物質」と呼ばれる。
(注2)ECHA:欧州化学品庁(European Chemicals Agency)
chemSHERPAの物質リストはJAMPという組織が年2回作っています。SVHCについてはWebにあるECHAのリストを元に作っていますが、ポイントはECHAのリストでの物質の表記方法です。物質を個別名ではなく化合物群で記載している場合があります。
「化合物群」?なにそれ?と思いますよね。
例えば
・個別名称:豚骨ラーメン、味噌ラーメン、タンメン、チャーシュー麺、など
・群名称:ラーメン
と思えばわかりやすいかと思います。
同様にECHAのCandidateリストには、例えばPerfluorononan-1-oic-acid and its sodium and ammonium saltsという群物質名が載っていますがCAS No.はありません。しかしリストの右側には、この群物質のSupport documentのリンクが貼られています。このリンク文書を開くと、個別の物質を特定するためのCAS No.が3つ載っていることがわかります。この3つのCAS No.がchemSHERPAの物質リストに収載されるので、一見するとECHAのリストにない物質にフラグが立つように見えるのです。実際には、ECHAのリストからリンクされる文書に載っている個別物質を載せているので、ECHAのリストとchemSHERPAの物質リストは一致しています。
例えて言うと、リストには「ラーメン」としか書いていないのに、リンク文書には「とんこつチャーシュー」「みそバターコーン」「タンメン」「炙りチャーシュー」などが並んでいるような状況です。これらを一つの表にまとめると、「ラーメン」に加えて「とんこつチャーシュー」「みそバターコーン」「タンメン」「炙りチャーシュー」などが並ぶことになります。
リストに載っていないように見える「とんこつチャーシュー」にラーメンフラグが立つ理由、おわかりいただけたでしょうか。
とはいえ、いちいちECHAのSupport documentまで見てご自分で確認するのは大変でしょう。chemSHERPAというツールはただのツールなので、フラグが立ったら立ったで、ツールとして割り切って使っていくのが現実的だと思います。